リリアン・ギッシュ(Lillian Gish)

生年月日 : 1893/10/14
出身地 : アメリカ/オハイオ州
没年 : 1993/02/27

5歳から子役として舞台を踏み、絵や雑誌のモデルとしても活躍していた。

1912年、演劇仲間であったメアリー・ピックフォードの紹介で映画界へ。

同年、D・W・グリフィス監督の「見えざる敵(An Unseen Enemy)」で映画デビュー。

以降「国民の創生 1915」「散り行く花 1919」など、薄幸の少女役として同監督の作品に出演、
ピックフォードと並んで、女優人気を二分する活躍振りを示す。

トーキー後のイメージチェンジにも成功し、映画界黎明期から息の長い活躍を続けた。




代表作品

      国民の創生(The Birth of a Nation)1915年(米)

キャメロン家のベン(ウォルソール)と、ストーマン家のエルシー(ギッシュ)は、恋人同士だった。
両家は、南部と北部に分かれていたが、長年親しく付き合いを続けてきた。
ところが南北戦争が勃発し、両家は敵味方となって戦わねばならなくなった。

南北戦争を背景に、南部と北部二つの家族が、親しい仲から敵対する相手へと変遷してゆく様を描いた一大叙事詩。
人種間の抗争が両家の男女の仲を引き裂くという、ヒロイックな物語でもある。

ただし、現代の観点からみれば問題もある。黒人の奴隷が白人の娘をレイプしたり、黒人排除を推進する秘密結社
「KKK」を肯定的に描いたりと、白人至上主義の視点から描かれているためである。

本作は歴史的大作と評価される一方、黒人のリンチシーンなど「人権問題をいっそう悪化させた」と、各方面で
物議を醸したが、それらがかえって空前の大ヒットに結び付き、後世に語り継がれる作品となった。

(監督)デヴィッド・ウォーク・グリフィス(David Wark Griffith)
(出演)リリアン・ギッシュ(Lillian Gish)ヘンリー・B・ウォルソール(Henry Brazeale Walthall)
 
       
       
    イントレランス(Intolerance)1916年(米)

1910年代のアメリカ。ある工場で賃金カットが行われ、従業員はストライキを起こしたが鎮圧される。
ある青年は、これがきっかけで職を失ってしまう。生活の道を断たれた彼は、ギャングの手下になるが
罠にはまり、冤罪を着せられ死刑を宣告されてしまう。

前作「国民の創生」の成功を受けて制作された超大作。古代バビロンの滅亡、キリストの受難、
聖バルテルミーの虐殺、そして現代の不幸な青年の物語という、異なる時代の四つのエピソードが
同時進行で描かれる。だがこの野心的な手法は当時の観客になじまず、興行的には大惨敗を喫した。

しかし、互いに全く無関係な出来事を並行して描き出す映画形式は、後に、高度な撮影技術である
クロスカッティング技法として完成されることになり、本作は、後世の映画に多大な影響を与えた
古典的作品として映画史に刻まれることになった。

リリアン・ギッシュは、揺りかごを揺らす女という、各エピソードをつなぐ重要な役柄を演じている。

(監督)デヴィッド・ウォーク・グリフィス(David Wark Griffith)
(出演)リリアン・ギッシュ(Lillian Gish)
       
       
    散り行く花(Broken Blossoms)1919年(米)

父親の虐待に堪えかねて家を逃げ出したルシー(ギッシュ)は、疲れと空腹のため倒れ込んでしまう。
折よく通りかかった中国人青年チェン(バーセルメス)に救われ、その家に担ぎ込まれた。

幸せを知ることのなかったルシーにとって、チェンの親切は心に沁みた。深い感謝の思いはいつしか
激しい恋と燃えるのだった。

娘が男と暮らしていると知った父親は激怒し、ルシーを連れ戻し、殴り殺してしまう。チェン青年は
怒りと悲しみのあまり、父親を射殺する。そしてルシーの屍を心をこめて葬ったのちに、彼もまた
自らの手でその若き一生の幕を閉じたのである。

貧困や児童虐待といった社会的な問題を共感をもって取り上げつつ純愛ドラマとして完成した傑作。
女優リリアン・ギッシュは、本作で全世界の涙をしぼり不動のスターとなった。

(監督)デヴィッド・ウォーク・グリフィス(David Wark Griffith)
(出演)リリアン・ギッシュ(Lillian Gish)リチャード・バーセルメス(Richard Barthelmess)
 
       

見えざる敵(An Unseen Enemy)1912年
イブの二人の娘(Two Daughters of Eve)1912年
近くて遠きもの(So Near, yet So Far)1912年
牧場の春(In the Aisles of the Wild)1912年
母の心(The Mothering Heart)1913年
アッシリアの遠征(Judith of Bethulia)1914年
国民の創生(The Birth of a Nation)1915年
清き心(Enoch Arden)1915年
ダフネと海賊(Daphne and the Pirate)1916年
暴風の後(Sold for Marriage)1916年
イントレランス(Intolerance)1916年
世界の心(Hearts of the World)1918年
偉大なる愛(The Great Love)1918年
人類の春(The Greatest Thing in Life)1918年
幸福の谷(A Romance of Happy Valley)1919年
散り行く花(Broken Blossoms)1919年
スージーの真心(True Heart Susie)1919年
大疑問(The Greatest Question)1919年
東への道(Way Down East)1920年
嵐の孤兒(Orphans of the Storm)1921年
ホワイト・シスター(The White Sister)1923年
ロモラ(Romola)1924年
ベン・ハー(Ben Hur)1925年
ラ・ボエーム(La bohème)1926年
真紅の文字(The Scarlet Letter)1926年
風(The Wind)1928年
白鳥(One Romantic Night)1930年
彼の二重生活(His Double Life)1933年
暁の勝利(Commandos Strike at Dawn)1942年
初恋時代(Miss Susie Slagle's)1946年
白昼の決闘(Duel in the Sun)1946年
ジェニイの肖像(Portrait of Jennie)1948年
蜘蛛の巣(The Cobweb)1955年
狩人の夜(The Night of the Hunter)1955年
私に殺された男(Orders to Kill)1958年
許されざる者(The Unforgiven)1960年
歌声は青空高く(Follow Me, Boys!)1966年
消えた拳銃(Warning Shot)1967年
危険な旅路(The Comedians)1967年
ウエディング(A Wedding)1978年
ハンボーン(Hambone and Hillie)1983年
くたばれ! ハリウッド(Sweet Liberty)1986年
八月の鯨(The Whales of August)1987年