ヴェルナー・クラウス(Werner Krauss)

生年月日 : 1884/06/23
出身地 : ドイツ/バイエルン州
没年 : 1959/10/20

1916年、リヒャルト・オスワルド監督の「ホフマン物語」で映画デビュー。

1920年、ロベルト・ヴィーネ監督の「カリガリ博士」では、悪魔のような精神病院の院長を演じ、
世界初のホラー映画としてセンセーションを巻き起こした。

クラウスは、カリガリ博士を演じた時点で35歳の若さだった。1922年「オセロ」では、
策略家イアーゴに扮し、1926年「プラーグの大学生」では悪魔スカピネリを演じた。

悪魔的な悪役を得意とした役者だが、一方、1936年「ブルグ劇場」では、年甲斐もなく若い娘に
恋をしてしまう老優ミッテラーなど、チャーミングな役もこなす名優である。

第二次大戦中ユダヤ人排斥運動に荷担したことから、戦後は干され不遇な晩年だったという。




代表作品

    カリガリ博士(Das Cabinet des Doktor Caligari)1920年(独)

精神病院の院長カリガリ(クラウス)は、一人の患者に催眠術をかけ、殺人を犯させる。
恐ろしい殺人事件が続き、町の人々は恐怖にわななく。フランシスという男が、院長の
行動に不審の念を抱き、院長が事件の犯人であることを突き止める。

原作では、ついにカリガリはつかまり、発狂してしまうのだが、検閲の目を恐れた監督は原作を改変し、
強引にフランシスを狂人に仕立ててしまった。つまり、カリガリ院長は狂人ではなく、院長に関する
根も葉もない犯罪の話をでっちあげたフランシスこそ、実は狂人であったという結末になっている。

人心を操って戦争へ駆り立てる権力構造を暴くはずの作品が、一人の狂人の見た幻想に差し替えられて
しまったのである。そのため本作は、作品としてのインパクトが弱くなってしまったことは否めない。

(監督)ロベルト・ヴィーネ(Robert Wiene)(出演)ヴェルナー・クラウス(Werner Krauss)
コンラート・ファイト(Conrad Veidt)フリードリッヒ・フェーエル(Friedrich Feher)
 
       
       
      ブルグ劇場(Burgtheater)1936年(独)

舞台俳優ミッテラー(クラウス)は、ウィーンのブルグ劇場を代表する名優だった。
だが、舞台一筋の彼は社交界を忌み嫌い、パーティの招待状には目もくれなかった。
ある日、彼は教会で出会った美しい娘レニ(ラキ)に一目惚れする。

彼女には、実は若い恋人がいるのだが、何も知らないミッテラーは、すっかり彼女に夢中に
なってしまう。だがやがて、彼女に恋人がいることを知り、鏡に映る自分の姿に、何と言う
阿呆だと嘲罵の言葉を吐きかけるのだった。

老俳優の「ファウスト」もどきの、ほろ苦い老いらくの恋を、格調高く描きだした作品。
失恋後、彼は舞台で「ファウスト」を演じた。その心からほとばしり出るような台詞と
渾身の演技に、観客の誰もが胸を熱くするのだった。

(監督)ヴィリ・フォルスト(Willi Forst)
(出演)ヴェルナー・クラウス(Werner Krauss)ホルテンゼ・ラキ(Hortense Raky)
 
       

ホフマン物語(Tales of Hoffmann)1916年
カリガリ博士(Das Kabinett des Doktor Caligari)1919年
カラマゾフの兄弟(Die Bruder Karamasoff)1921年
オセロ(Othello)1922年
燃ゆる大地(Der brennende Acker)1922年
成金(Fraulein Raffke)1923年
ベニスの商人(Der Kaufmann von Venedig)1923年
裏町の怪老窟(Das Wachsfigurenkabinett)1924年
真夏の夜の夢(Ein Sommernachtstraum)1924年
デカメロン夜話(Dekameron-Nachte)1924年
タルチュフ(Tartuff)1925年
喜びなき街(Die freudlose Gasse)1925年
女優ナナ(Nana)1926年
野鴨(Das Haus der Luge)1926年
プラーグの大学生(Der Student von Prag)1926年
心の不思議(Geheimnisse einer Seele)1926年
パンチネロ(Looping the Loop)1928年
ブルグ劇場(Burgtheater)1936年
ユダヤ人ズュース(Jud Sus)1940年