無人島の暮らし方 (3)  


有用植物 (その1)


ココヤシ (ヤシ科 ココス属 Cocos nucifera)

果実の中に果実水があり、魚や野菜を煮たり、飲料用にする。
果実から取り出した殻の内側にある胚乳を乾燥させたものをコプラと呼び、ヤシ油をしぼったり食用油やマーガリンの原料にする。

果実の繊維質を用いてロープやマットを製造する。
皮を海に何週間もつけておくと、筋だけが残る。

この筋(繊維)をより合わせてヤシロープができる。
魚取りの網を編むこともできる。

外側の皮は、タワシに利用。
内側の固い殻はコップとして利用。

葉はかごや屋根材にできる。


(ココナッツの皮の剥き方)
地面に埋めたヤリ状の棒に、果実を突き刺し、捻るようにして皮を剥く。








有用植物 (その2)

パパイヤ (パパイア科パパイア属 Carica papaya)
南アメリカ原産。高さ7〜10m。

緑色の若い果実は野菜として用い、熟したものはビタミンAとCが豊富で生食される。
乳液に含まれる蛋白質分解酵素パパインは、硬い肉を柔らかくする作用があり、若い果実を肉と一緒に煮込んだり、葉に肉を包んで一晩置くなどして使う。

また、葉や種子には、アルカロイドのカルパインが含まれ強心剤として用いられる。
茎や葉の絞り汁を塗る (できもの、外傷)



マンゴー(ウルシ科マンゴー属 Mangifera indica)
インド原産。高さ10〜30メートル。

樹液はゴム質で、アラビアゴムの代用にされる。
材はボートを始め各種の軽構造材、器具、家具に用いる。 

マンゴーの熟果には、テルペノイド・アンボリ酸、イソマンギフェロル酸、マンギフェロル酸、リンゴ酸などが含有される(食欲不振、風邪の咳止め)
樹皮の絞り汁、若い葉の乾燥粉末(下痢止め)







薬草 (その1)


アロエ (ユリ科アロエ属 Aloe arborescens 地中海沿岸原産)

アロエの名前の由来は、アラビア語で「苦い」を意味し、独特な苦み(アロイン)から名づけられた。
紀元前4世紀のアレクサンドロス大王は、哲学者アリストテレスからアロエの効能を聞き、遠征時にはアロエを持参し、
将兵の怪我の治療、健康維持に用いたと言われている。

紀元後1世紀にローマ皇帝ネロの侍医ディオスコリディスが書いた「ギリシャ本草」によれば、アロエには便秘を改善する効用、胃をきれいにする効用、
肌を引き締める効用、皮膚病を治す効用、その他、打撲、痔、口中の病気、抜け毛等に効果があることが記されている。

また、クレオパトラが、美しい肌を保ちつづけたのも、アロエの樹液を、肌に塗り、日焼けをさけたからだともいわれている。
アメリカや中南米ではアロエベラ、アフリカではケープアロエ、日本では、キダチアロエなど、その気候風土に適したアロエが普及している。


(服用法・薬効)

@生葉を流水でよく洗い、さいの目切りにしてそのまま食する。
(胃腸虚弱、食欲不振、糖尿病、高血圧、膀胱炎、頭痛、かぜ)

A生葉の表皮を取り除き、葉肉部分をそのまま食する。
(胃潰瘍、低血圧、便秘、肝炎、肥満)

B生葉を流水でよく洗い、おろし金でおろし、清潔な布で濾した液汁をそのまま飲用する。
(口内炎、リウマチ、冷え性、気管支炎、ぜんそく)

C生葉のゼリー部分を取り出し、熱湯で消毒してから皮膚に外用する。
(外傷、虫さされ、やけど)

D生葉をトゲ部分を除いてからすりおろし、清潔な布に染み込ませて皮膚に利用する。
(みずむし、花粉症、痔、捻挫、おでき、うおのめ、あせも、しもやけ、脱毛) 

Eそのほか、生葉を薄くスライスし、日光で乾燥させ、乾燥葉として利用する。
乾燥葉をすり鉢等で粉にし、茶漉し等で振るってアロエ粉末として利用する。
保存はビン等に乾燥剤と同封する。





薬草 (その2)


ウコン(ショウガ科ウコン属 Curucuma langa 英語 Turmeric ターメリック)
東インド原産。高さは約1メートル。

葉は芭蕉の葉を一回り小さくしたような形で、根茎は、肥大してショウガ根茎様の黄色根茎である。

(用途)根茎は、クルクミン(C21H20O4)が主成分で、止血剤、口紅などの化粧品、クリームや頭髪用化粧品など香料、
たくあん黄色漬やカレー粉の原料、天然の食用黄色染料として使用される。


(薬効)根茎を乾燥し、煎じて服用。

近畿大学東洋医学研究所では、肝臓病・糖尿病・高血圧・低血圧・ 肝炎・胃潰瘍・十二指潰瘍・黄疸・助膜・顔のむくみ・リュウマチ・
子宮出血・利尿・健胃・胆石症・二日酔い・ぜんそく・眼底出血・難聴・耳鳴り・擦り傷・切り傷等、多くの薬効をあげている。



ツボクサ (セリ科ツボクサ属 Centella asiatica)
別名 ペニーワート (Asiatic Pennywort)

熱帯アジア原産。茎が地面をはう背の低い多年生草本。

葉は丸く、ハスの葉のような切れ込みがあるか、もしくは丸いハート型で、 葉の周囲は、浅くギザギザになっている。
湿り気の多いところに見られる。
日本ではチドメグサと呼ばれ、葉の汁を傷口につけると止血できることに由来している。

(薬効)刻んだ葉を揉んで貼る。 傷、ただれに用いられる。
また、全草を乾燥させ、煎じて服用 解毒、止血などに用いられる。
   

 

その他注意事項

脱水症状

人間の体の構成成分のうち、約60%は水分で占められている。
そのうち約12%が失われると、生命が危険な状態になる。

重症に陥る前に、水分を補給しなければならない。

成人の1日に必要な水分量は約2.5リットル。
食べ物に含まれる水分で1リットルは補給できる。

したがって、1.5 リットル程度を飲み物で補う必要がある。

失われる
水分
 
  現れる症状 
1%    大量の汗、喉の渇き 
2%    めまい、吐き気  
8%    幻覚 
12%    生命の危険 


汗は、暑さや激しい運動によって上昇した体温を冷ます、人体の防御手段である。
大脳の温度が 37℃に達すると、体中の200万個の汗腺から汗が出る。

汗が蒸発するときに生じる気化熱で、体の体温を下げている。
機械にたとえると、汗は、過熱を防止する冷却水の役割をしている。


ラクダはどうして砂漠で水なしでも平気なのか。

こぶの中に蓄えている脂肪のおかげである。
脂肪を分解してエネルギーを補い、その過程でできる酸素と水素の結合で水分を作り出し吸収することができる。

@太陽に直接当たらないこと。無人島での日光浴は自殺行為に等しい。
A太陽や風に皮膚を露出させず、暑くても服を着て過ごす。水分の蒸発を抑えるためである。

B昼間は日陰で休み、移動は夜間夜明けにする。
C気温が高いときは、地面に寝そべらない。地面の温度は、気温より最高で15℃高いことさえある。

D食事はできるだけ少なく。食べ物の消化には、多量の水分が必要である。




熱帯病

マラリア (Malaria) 潜伏期間1〜3週間。

マラリア原虫が、ハマダラ蚊の媒介で人体に感染して発病する。
40度以上の高熱、震え、頭痛、嘔吐、下痢が伴い、この状態が3〜6時間続いた後、多量の発汗をともない解熱。
この発熱と解熱が一定の間隔で繰り返される。

一番の予防は蚊に刺されないようすること。
蚊の吸血時間は日暮れから夜明けまでの間なので、この時間は外出しないか、もしくは長袖や長ズボンを着用する。



キナノキの樹皮にはマラリアの特効薬キニーネ(Quinine)などのアルカロイドが含まれ、ペルーやボリビアの原住民の間では、
古くから、樹皮を粉末にして煎じて飲むと、マラリアだけではなく、熱病の薬になることは知られていた。

現地語で、クィンクィナ (皮のなかの皮の意味)に、キナノキ(Cinchona)と名づけたのは、植物学者のリンネ(Carl von Linne)である。



下痢 (Diarrhea)

感染の危険性を減らすには、飲食物に注意。体が慣れていないときは、生水も避ける。
徐々に体を慣らし免疫力を高めるのが、最良の予防法である。半年もすれば生水を飲んでも平気になる。 

たいていの下痢症状は、数日で解消する。脱水状態にならないよう、充分に水分、塩分を補給する。


デング熱 (Dengue Fever) 潜伏期間2〜15日。

病原菌ウイルスを持つネッタイシマ蚊、ヒトスジマ蚊に刺されることによって感染。
40度の高熱とともに発病、頭痛、関節痛、筋肉痛を伴い、全身に赤い発疹が現れる。

現在有効なワクチン及び予防薬がないので、蚊に刺されないことしか予防策はない。

ヘビ、サソリ、毒グモなど

ヘビが咬んだり、サソリが刺すのは彼らの防衛反応で、特に夜間に起こる。
足をすっぽり包む靴やブーツ(長靴)を履くのが、夜間に戸外を歩くときの賢明な予防対策である。