伏見直江(ふしみなおえ)(1908-1982)
1908年(明治41年)11月10日東京生まれ。本名は伏見直枝。初期芸名は藤間照子、霧島直子。
ちょっとくずれた伝法な女、例えば「一本刀土俵入り」の酌婦お蔦とか「丹下左膳」の
櫛巻お藤を演じたら天下一品で、彼女の右に出る女優はいなかった。
実生活もまた、大酒をあおり、競馬に熱中し、スッテンテンになっても、ケロッとしている
大人物でもあった。
一時期、時代劇で名コンビとなった大河内伝次郎との結婚話が噂として流れ、新聞紙上を賑わした。
私生活でも二人は同棲していたが、大河内の母親の「あんな女との結婚は許さない」の言葉で破談になった。
伏見は「乞食になっても二号にはなりたくないよ」と啖呵を切り、大河内のもとを去ったという。
伏見は、東京深川の生まれで、父は新派の旅回り役者。その関係で少女時代から舞台や、映画の少年役をつとめた。
1924年(大正13年)築地小劇場に入団。が、小学校にもろくに通わなかったので、台本の字が読めずに苦労した。
1927年(昭和2年)日活京都に入社。大河内伝次郎とのコンビが好評で、妖艶な時代劇女優として人気をあつめた。
特に「忠次旅日記」(昭和2年)3部作、「新版大岡政談」(昭和3年)など大河内との呼吸ぴったりの共演は、
時代劇史場に燦然とした光芒を放っている。
戦後は妹の信子と大阪にクラブを開いた。1982年(昭和57年)腎不全のため大阪の病院で死去した。享年73歳。
代表作品
帝キネ「山の力」(小島洋々、浜田格、里見明、横山隆吉、東条正、藤間照子)1923年(大正12年)
帝キネ「銀の雨」(松本泰輔、小島洋々、斎藤紫香、石川健三、富士日出子、霧島直子)1926年(大正15年)
帝キネ「青春の歓喜」(小島洋々、瀬川銀潮、霧島直子、浜田格)1926年(大正15年)
帝キネ「関東綱五郎 前篇」(市川百々之助、片岡童十郎、阪東豊昇、霧島直子)1926年(大正15年)
帝キネ「恋路猛進」(里見明、松本泰輔、霧島直子、斎藤紫香)1926年(大正15年)
帝キネ「関東綱五郎 後篇」(市川百々之助、片岡童十郎、阪東豊昇、霧島直子)1926年(大正15年)
帝キネ「女難」(市川百々之助、実川延笑、霧島直子、山下澄子)1926年(大正15年)
帝キネ「侠客」(市川百々之助、霧島直子)1926年(大正15年)
帝キネ「幻の森」(里見明、吉乃花子、霧島直子、斎藤紫香)1926年(大正15年)
帝キネ「若様」(市川百々之助、霧島直子)1927年(昭和2年)
帝キネ「血桜 前篇」(市川百々之助、山下澄子、霧島直子)1927年(昭和2年)
帝キネ「血桜 後篇」(市川百々之助、山下澄子、霧島直子)1927年(昭和2年)
帝キネ「お小性塚」(市川百々之助、霧島直子)1927年(昭和2年)
帝キネ「愛はつはもの」(吉田豊作、園千枝子、斎藤紫香、瀬川銀潮、霧島直子)1927年(昭和2年)
帝キネ「怪人」(市川百々之助、霧島直子)1927年(昭和2年)
帝キネ「淀川心中」(市川百々之助、霧島直子)1927年(昭和2年)
阪妻プロ「兄貴」(伏見直江、氷室徹平)1927年(昭和2年)
阪妻プロ「閻魔帖抜書」(梅若礼三郎、伏見直江)1927年(昭和2年)
松竹「血染の十字架 」(阪東妻三郎、森静子、中村吉松、西条香代子、伏見直江)1927年(昭和2年)
松竹「大前田英五郎」(梅若礼三郎、伏見直江)1927年(昭和2年)
日活「忠次旅日記 御用篇」(大河内伝次郎、伏見直江、磯川元春、村上英二)1927年(昭和2年)
日活「坂本竜馬」(広瀬恒美、久米譲、葛木香一、桜木梅子、伏見直江)1928年(昭和3年)
日活「熱血の魁人」(浅岡信夫、伏見直江、伏見信子、藤野竜太郎)1928年(昭和3年)
日活「江戸三国志 第一篇」(河部五郎、酒井米子、葛木香一、伏見直江)1928年(昭和3年)
日活「花嫁花婿再婚記」(岡田時彦、見明凡太郎、伏見直江)1928年(昭和3年)
日活「続水戸黄門」(山本嘉一、河部五郎、尾上多見太郎、大河内伝次郎、伏見直江)1928年(昭和3年)
日活「江戸三国志 第二篇」(河部五郎、酒井米子、葛木香一、伏見直江、三桝豊)1928年(昭和3年)
日活「新版大岡政談 第一篇」(大河内伝次郎、伏見直江、伊藤みはる、梅村蓉子)1928年(昭和3年)
日活「新版大岡政談 第二篇」(大河内伝次郎、伏見直江、伊藤みはる、梅村蓉子)1928年(昭和3年)
日活「新版四谷怪談」(松本泰輔、葛木香一、伏見直江、沢村春子)1928年(昭和3年)
日活「江戸三国志 第三篇」(河部五郎、酒井米子、葛木香一、伏見直江、三桝豊)1928年(昭和3年)
日活「新版大岡政談 第三篇 解決篇」(大河内伝次郎、伏見直江、伊藤みはる、梅村蓉子)1928年(昭和3年)
日活「維新の京洛 竜の巻 虎の巻」(山本嘉一、河部五郎、大河内伝次郎、伏見直江)1928年(昭和3年)
日活「英傑秀吉」(山本嘉一、河部五郎、葛木香一、梅村蓉子、伏見直江)1929年(昭和4年)
日活「謎の人形師」(大河内伝次郎、伏見直江、吉本真登子、楠英二郎)1929年(昭和4年)
日活「赤穂浪士 第一篇 堀田隼人の巻」(大河内伝次郎、光岡竜三郎、伏見直江)1929年(昭和4年)
日活「続大岡政談 魔像篇第一」(大河内伝次郎、小川隆、梅村蓉子、伏見直江)1930年(昭和5年)
日活「素浪人忠弥」(大河内伝次郎、葛木香一、光岡龍三郎、伏見直江、山田五十鈴)1930年(昭和5年)
日活「興亡新選組前史」(大河内伝次郎、市川小文治、浅香新八郎、山田五十鈴、伏見直江)1930年(昭和5年)
日活「興亡新選組後史」(大河内伝次郎、市川小文治、浅香新八郎、山田五十鈴、伏見直江)1930年(昭和5年)
日活「背中の磔」(光岡竜三郎、尾上華丈、新妻英助、伏見直江)1930年(昭和5年)
日活「旅姿上州訛」(大河内伝次郎、山本礼三郎、伏見直江、実川延一郎)1930年(昭和5年)
日活「女狼」(伏見直江、磯川元春、鳥羽陽之助、久米譲)1931年(昭和6年)
日活「花火」(片岡千恵蔵、尾上宇多五郎、伏見信子、高木永二、伏見直江)1931年(昭和6年)
日活「続大岡政談 魔像解決篇」(大河内伝次郎、小川隆、伏見直江、山田五十鈴)1931年(昭和6年)
日活「一本刀土俵入」(片岡千恵蔵、伏見直江、ミドリ雅子、成松和一、市川小文治)1931年(昭和6年)
日活「御誂次郎吉格子」(大河内伝次郎、伏見直江、伏見信子、高勢実乗)1931年(昭和6年)
日活「女国定」(伏見直江、市川小文治、永井寛二郎、葛木香一、久米譲)1932年(昭和7年)
日活「薩摩飛脚 東海篇」(大河内伝次郎、沢村国太郎、尾上助三郎、伏見直江)1932年(昭和7年)
日活「三万両五十三次 江戸明暗篇」(大河内伝次郎、市川小文治、伏見直江)1932年(昭和7年)
日活「薩摩飛脚 剣光愛欲篇」(大河内伝次郎、沢村国太郎、尾上助三郎、伏見直江)1933年(昭和8年)
新興「貞操問答 高原の巻」(入江たか子、鈴木伝明、伏見直江、山県直代)1935年(昭和10年)
新興「貞操問答 都会の巻」(入江たか子、鈴木伝明、伏見直江、山県直代)1935年(昭和10年)
松竹「雪之丞変化 第一篇」(林長二郎、嵐徳三郎、高堂国典、伏見直江)1935年(昭和10年)
松竹「雪之丞変化 第二篇」(林長二郎、嵐徳三郎、高堂国典、伏見直江)1935年(昭和10年)
新興「砂絵呪縛 森尾重四郎 前篇」(阪東妻三郎、森静子、伏見直江、三桝豊)1935年(昭和10年)
松竹「雪之丞変化 解決篇」(林長二郎、嵐徳三郎、高堂国典、伏見直江)1936年(昭和11年)
新興「砂絵呪縛 森尾重四郎 後篇」(阪東妻三郎、森静子、伏見直江、三桝豊)1936年(昭和11年)
松竹「月形半平太」(坂東好太郎、北見礼子、本郷秀雄、伏見直江)1939年(昭和14年)
松竹「雪之丞変化 闇太郎懺悔」(坂東好太郎、北見礼子、海江田譲二、伏見直江)1939年(昭和14年)
松竹「縁談暦」(藤井貢、坪井哲、伏見直江、北見礼子)1940年(昭和15年)
新東宝「女左膳 鍔鳴無刀流の巻」(川路竜子、伊豆肇、香川京子、月丘千秋、伏見直江)1950年(昭和25年)
東宝「新座頭市物語 折れた杖」(勝新太郎、太地喜和子、吉沢京子、高城丈二、伏見直江)1972年(昭和47年)