チロルの挽歌 1992年(平成4年) ドラマ傑作選


鉄道会社の技術部長・立石実郎(高倉健)は、東京で娘・亜紀と二人暮らし。
実郎の妻・志津江(大原麗子)は、四年前に駆け落ちして行方不明だった。
妻の駆け落ち相手は、かつて実郎が自殺を思いとどまらせた菊川(杉浦直樹)
という男だった。
ある日、実郎は、北海道でのテーマパーク建設責任者を命じられ、赴任する。
だが、赴任先の町には、妻と菊川がひっそりと暮らしていた。
実郎の赴任を知り、菊川は逃げ回る。偶然顔をあわせたとき、実郎は菊川に妻を
取り戻す意思があることを伝え、三人で話し合うことを提案する。
だが、事実上の「夫婦」として生活している二人の姿を見て、実郎はテーマパーク
の完成を見ずに、職を辞して北海道を去ることを考え始める。
しかし、意図せず三人が顔をあわせた席で出された結論は、意外なものであった。
主演の高倉健を念頭に置いて、山田太一が書いたオリジナル脚本。
高倉の役柄は、定年間近の鉄道技師。四年前に妻に男と駆け落ちされている。
実はその男は、鉄道自殺しようとしているところを、高倉が助けた男だった。
駆け落ちの理由は、高倉が仕事一途で、家に帰っても、妻とろくに会話もせず、
それでいて威張っていたので、ついに妻が、嫌気をさしたからだ。
高倉は妻に未練があり、なんとか妻を取り戻したい、妻に気に入る男になりたいと願う。
もともと技術職で無口。だが、これからは寡黙であってはならないと、大いに反省する。
高倉は、過去の自分から生まれ変わろうと、北海道でのテーマパーク作りに挑戦する。
旧炭鉱町だった地元が、レジャー施設を誘致して、斜陽化を食い止めようとしている。
時代のうねりの中で、生き残りをかける姿が、高倉の境遇に重ね合わせて描かれる。
ところが、その町で逃げた妻と、相手の男と会い、三人それぞれの葛藤が始まる。
本作は、トレンディドラマ全盛の中にあって、登場人物の心のひだを丁寧に描写した、
いかにも「大人のドラマ」といった内容だ。
ロケ地は北海道の芦別市。高倉は「網走番外地シリーズなどで、しょっちゅう来ているから、
ホームグラウンドのようなもの」と余裕をみせた。
大原麗子とも、映画で何度も共演しているだけに、息の合ったところをみせている。
(制作)NHK(脚本)山田太一
(配役)立石実郎(高倉健)立石志津江(大原麗子)立石亜紀(白島靖代)菊川隆彦(杉浦直樹)
山縣元夫(河原崎長一郎)種村課長(西岡徳馬)室津喜八(佐野浅夫)半田厳(岡田英次)
