不断草(ふだんそう) 1980年(昭和55年) ドラマ傑作選
菊枝(吉永小百合)は突然、夫・三郎兵衛(林与一)に離縁を申し渡された。
結婚してわずか半年、優しい盲目の義母・康代(三益愛子)の世話にも、
やっと慣れた時だった。
やがて三郎兵衛は、謀反に加わったとして、お役御免となり、姿を消す。
菊枝は「お秋」と名を変えて、一人残された康代に仕えるのだった。
1942年(昭和17年)「婦人倶楽部」に連載された山本周五郎の同名短編小説のドラマ化。
武家に嫁いで間もない妻が、理由も分からぬまま離縁され、その真相を知るために身分を隠して
盲目の義母に仕える。
時が経ち、お秋が菊枝だということに気づいた康代は、三郎兵衛が菊枝を離縁した理由は、
妻の実家へ塁が及ぶことを避けるためだった、と真実を告げた。
そのころ米沢藩では、藩主の財政改革に対して、一部の重臣たちが反旗を翻していた。
そしてその政変に三郎兵衛も深くかかわっており、恐らくは自分の身も無事では済まない
ことを悟っていたのだった。
菊枝と義母の暮らしが五年を過ぎた頃、藩の騒動もほぼ収まり、三郎兵衛の名誉も回復されて
米沢へ帰参することが決まる。
その知らせを聞いた菊枝は大変嬉しく思い、これからも義母を支えて夫の帰りを待つ決心をするのだった。
ヒロインの菊枝に扮した吉永小百合は、この当時34歳、十分な芸歴を誇り、物柔らかさの中に、
耐え忍び一途に尽くす武士の妻を見事に演じている。
盲目の義母に扮した三益愛子とともに、本作は女性の芯の強さ、たくましさが前面に出た作品であった。
(制作)TBS(原作)山本周五郎(脚本)砂田量爾
(配役)菊枝(吉永小百合)登野村三郎兵衛(林与一)康代(三益愛子)長沢市左衛門(有島一郎)
中山庄太夫(垂水悟郎)蜂屋伊兵衛(立原博)千坂対馬(金内吉男)中山新之助(三ツ木清隆)