冬の恋人 1980年(昭和55年) ドラマ傑作選
売れっ子のニュースキャスター(仲谷昇)を夫に持つ杳子(若尾文子)は、ふとしたことから
年下のカーレーサー・中沢(田村正和)と知り合い、激しい恋におちる。
寛容な夫は、一時の気の迷いと見て、中沢に走った杳子を許すが、離婚届に判を押そうとはしない。
やがて中沢と杳子の間にもヒビが入り、杳子は自殺を企てる。
著名なニュースキャスターの夫を捨て、悲運のカーレーサーとの愛に生きる人妻を若尾文子が熱演。
ドラマは杳子の自殺未遂という意外な場面から始まる。
ガス自殺を図った杳子だが、マンションの隣人の若夫婦(三浦洋一、名取裕子)に助けられる。
数ヵ月前からレーサーの中沢と暮らしていたが、南米でのレースで惨敗して、酒浸りとなった中沢と
いさかいになり「愛していない」との言葉にショックを受けての行為だった。
駆けつけた夫は、意地を張らずに帰ってこいと言うのだが…。
要するに三角関係のドラマなのだが、それをひたすら甘く感傷的に描いている。
原作は、イギリスの劇作家・テレンス・ラティガンの戯曲で、かつてヴィヴィアン・リー主演で
映画化されたときのタイトルは「愛情は深い海のごとく(The Deep Blue Sea 1955年)」だった。
シナリオ作家の八木柊一郎が若尾のために脚色、若尾を撮って定評のある久野浩平が演出した。
いわば若尾の魅力を引き出すためのメロドラマであり、若尾文子という女優がいなければ
成立し得ないドラマでもある。
(制作)フジテレビ(原作)テレンス・ラティガン(脚本)八木柊一郎
(配役)柳杳子(若尾文子)柳晃(仲谷昇)中沢稔(田村正和)野口(三浦洋一)
麻沙子(名取裕子)須貝(中村伸郎)堀江なお(加藤道子)