マー姉ちゃん 1979年(昭和54年) ドラマ傑作選
油絵画家を目指すマリ子(熊谷真実)は、自分の渾身作を地元福岡の展覧会に出品する。
だが、その作品が「裸婦像」だったために、芸術か猥褻かで大騒動になってしまう。
マリ子の通う高校の校長(高松英郎)まで呼び出され、侃々諤々の議論の末、展示の際に
「ハチマキ」 で下腹部を隠すことに。だが、なんとその作品が金賞を受賞する。
マリ子の母・はる(藤田弓子)は、この受賞をきっかけに、東京でマリ子の絵の才能を
伸ばしてやりたいと決意する。
母・はるの号令ひとつ、磯野家三姉妹(マリ子、マチ子、ヨウ子)の上京が決まった。
父が急死して一年、泣き暮らしていた母だったが、持ち前の猛烈ぶりが復活したのだった。
上京後、マリ子は画塾に入門。マチ子(田中裕子)とヨウ子も東京の学校に編入する。
ある日、マチ子が「うちには夢がない。『のらくろ』の田河水泡の弟子になりたい」
とつぶやくと、母・はるはマリ子にマチ子を田河水泡に弟子入りさせるよう命じる。
晴れて田河水泡(愛川欽也)の弟子となったマチ子は、やがて田河の後押しで15歳で
「天才少女漫画家」としてデビューを果たすのだった。
画家志望の磯野家の長女マリ子が戦中戦後の混乱の中で、女ばかりの四人一家を引っ張り、
のちに「サザエさん」を生み出した妹マチ子を世に送り出すまでをコミカルに描いた生活史。
元気はつらつなマリ子に扮した熊谷真実と、この作品でデビューしたマチ子役の田中裕子の
コンビネーションが絶妙だった。
原作者の長谷川町子は、三姉妹の二女だった。戦後の荒廃した市場で、母をまじえた四人の
女系家族が力を合わせ、出版社「姉妹社」を設立し、リヤカーに「サザエさん」の単行本を
積んで神田の取次店を歩いて廻った姿がドラマの中で描かれている。
漫画の中で、イソノ・フグタ両家を背負って立っていた「サザエさん」のモデルはまさしく
「マー姉ちゃん」こと長姉のマリ子であった。
(制作)NHK(原作)長谷川町子(脚本)小山内美江子
(配役)磯野マリ子(熊谷真実)磯野はる(藤田弓子)磯野マチ子(田中裕子)磯野ヨウ子(平塚磨紀、早川里美)
田畑千代(二木てるみ)戸田トミ子(村田みゆき)校長(高松英郎)田河水泡(愛川欽也)