港町純情シネマ 1980年(昭和55年) ドラマ傑作選


十年間も漁船の機関士をつとめていた禄郎(西田敏行)は、父親(室田日出男)からの
手紙を読んで船を降りる決心をする。
港町の映画館を経営する父は、息子を支配人としてすべて任せると書いてきたのだ。
実はその映画館「港シネマ」は、経営不振で沈没寸前だった。
禄郎はここでも「機関士」としてエンジンをまわし、映画館を立ち直らせねばならない。
だがそんな重大な責任が待ち受けているにもかかわらず、禄郎の心は明るかった。
ひとつは、港で彼を出迎えてくれるに違いない川辺邦子(伊藤蘭)の存在だ。
邦子は、港シネマの住み込み家政婦(北林谷栄)の孫娘で、モギリ嬢をやっている。
もうひとつは、彼自身のとてつもない「空想癖」だ。
映画館育ちの禄郎は、映画のヒーローに自分をすぐ同化させ「カサブランカ」を観れば
すぐボギーに、西部劇ならジョン・ウェインに、彼は簡単に変身してしまうのだ。
彼はいわば、港町の「虹を掴む男」なのだ。
しかし、現実は常に厳しい。船が港に着き、禄郎は「渡り鳥シリーズ」の小林旭よろしく
さっそうと岸壁へ降り立った。だがしかし、彼を出迎えたのは父の万造の仏頂面だった。
夢にまで見た邦子は姿を見せなかった。
万造の話では、邦子には二枚目の洋画セールスマンの恋人ができたというし、
支配人ではなく、禄郎は映写技師にされてしまうのだった。
千葉の銚子にある、潰れかかった映画館を舞台にした人情喜劇。
主人公の禄郎は、船乗りあがりの映写技師。
ロマンチストの彼は、映画のヒーローと自分を同化させる空想癖を持っていた。
毎回、懐かしの映画の名場面が劇中に登場し、禄郎が作中人物になり切って
妄想するシーンが見どころとなっている。
西田敏行、室田日出男、木の実ナナなど、役者も個性派を揃えた。とりわけ西田は
ハマリ役で、彼の一見コミカルな中に、人生の哀歓を漂わせる演技は見ものだ。
どうやら彼の妄想シーンと現実との落差が、本作のテーマとなっているようだ。
(制作)TBS(脚本)市川森一
(主題歌)木の実ナナ「砂の城」(作詞作曲:五輪真弓)
(配役)猿田禄郎(西田敏行)万造(室田日出男)加代(森下愛子)川辺邦子(伊藤蘭)川辺清(北林谷栄)
野村政子(木の実ナナ)文麿(岸部一徳)角野竜次(柴俊夫)谷口(原保美)明(風間杜夫)あざみ(樋口可南子)
