大友柳太朗(おおともりゅうたろう)(1912-1985)
1912年(明治45年)6月5日広島生まれ。松山中学卒。本名、中富正三。
もったいつけた発声から、ぎょろりとむいた目玉まで、まさに時代劇をやるために生まれてきたような役者だ。
松山中学を卒業後、新国劇に入り辰巳柳太郎の弟子となる。初っぱなから時代劇、本人もチャンバラ志望だったらしい。
師匠の辰巳柳太郎は、荒っぽい性格の人物で、無知で図々しくて、狂暴なサムライを演じたら、天下一品の役者だった。
こんな師匠に6年間、剣戟のイロハを叩き込まれた大友は、1936年新興キネマに入社、晴れて映画界入りを果たす。
師匠の名を貰い、芸名は大友柳太郎となった。
1937年「青空浪士」に初出演。新人ながら主役に抜擢された。しかも大女優、山田五十鈴の相手役という破格の待遇だった。
大友は筋が良く、何よりも立ち回りの上手さが決め手となった。新国劇での6年間の修行が実を結んだのだ。
その後も大友は主演を張り、一躍スター俳優の仲間入りを果たした。
だが1943年、太平洋戦争に伴い召集を受け、大友は満州に出征。
1946年敗戦に伴い復員するも、GHQの「チャンバラ禁止令」により、大友は活躍の場を奪われ、不遇の時期が続くことになった。
この間、片岡千恵蔵や嵐寛寿郎らの時代劇スターたちも、明治ものや現代劇、たとえば千恵蔵主演の「多羅尾伴内」シリーズなどで、お茶をにごさざるを得なかった。
1950年ようやく時代劇が解禁され、大友は心機一転、柳太郎の「郎」を「朗」に変え、大友柳太朗と名乗った。
1951年東映が発足、大友は片岡千恵蔵らとともに東映に移籍した。
1953年大友が主演した「快傑黒頭巾」が大ヒット。大友は黒頭巾役者として、たちまち子供たちの人気の的となった。
快傑黒頭巾は、引き続いて合計8本が制作され、ロングシリーズとなった。1954年からの「笛吹童子」シリーズでは霧の小次郎役でさらに人気を博した。
大友は、以後も「丹下左膳」シリーズ、「右門捕物帖」シリーズを当たり役とし、快傑黒頭巾と合わせて三つのシリーズを持つ東映時代劇大スターとして活躍。
晩年は、テレビ時代劇に数多く出演、ベテランの脇役としていぶし銀の存在感を示した。
だが惜しくも1985年(昭和60年)9月27日、73歳で不帰の人となった。戦前・戦後を通じて剣戟一筋に生き、時代劇人気を支え続けた生涯であった。
代表作品
新興「青空浪士」(大友柳太郎、山田五十鈴、尾上松緑、葛木香一、梅村蓉子)1937年(昭和12年)
新興「佐賀怪猫伝」(大友柳太郎、鈴木澄子、甲斐世津子、尾上栄五郎、浅香新八郎)1937年(昭和12年)
新興「勤王田舎侍」(大友柳太郎、山田五十鈴、市川男女之助、森静子、梅村蓉子)1937年(昭和12年)
新興「さむらひ音頭」(大友柳太郎、高津慶子、千代田勝太郎、梅村蓉子、荒木忍)1937年(昭和12年)
新興「吉田御殿」(山田五十鈴、大友柳太郎、月形龍之介、浅香新八郎、市川男女之助)1937年(昭和12年)
新興「静御前」(山田五十鈴、大友柳太郎、尾上栄五郎、松本田三郎、南部章三)1938年(昭和13年)
新興「振袖若衆」(大友柳太郎、高山広子、小川操、舟波邦之介、片桐恒男)1938年(昭和13年)
新興「佐渡おけさ」(大友柳太郎、高山広子、芝田新、葛木香一、尾上紋弥)1939年(昭和14年)
新興「隠密姫」(大友柳太郎、松浦妙子、芝田新、荒木忍、寺島貢)1939年(昭和14年)
新興「槍の権三」(大友柳太郎、岡春恵、荒木忍、伴淳三郎、南部章三)1940年(昭和15年)
新興「花嫁十三夜」(大友柳太郎、松浦妙子、梅村蓉子、荒木忍、片桐恒男)1940年(昭和15年)
新興「国姓爺合戦」(市川右太衛門、大友柳太郎、逢初夢子、上山草人、寺島貢)1940年(昭和15年)
新興「花嫁穏密」(大友柳太郎、高山広子、市川男女之助、南絛新太郎、南部章三)1941年(昭和16年)
新興「荒木又右衛門 仇討の日」(市川右太衛門、大友柳太郎、南条新太郎、原聖四郎)1941年(昭和16年)
新興「阿修羅姫」(市川右太衛門、大友柳太郎、羅門光三郎、歌川絹枝、雲井八重子)1941年(昭和16年)
大映「お市の方」(大友柳太郎、荒木忍、月形龍之介、宮城千賀子、橘公子)1942年(昭和17年)
大映「逃亡者」(大友柳太郎、月宮乙女、見明凡太郎、滝花久子、村田宏寿、水原洋一)1947年(昭和22年)
大映「王将」(阪東妻三郎、水戸光子、三條美紀、大友柳太郎、滝沢修)1948年(昭和23年)
東横「いれずみ判官 桜花乱舞の巻」(片岡千恵蔵、花柳小菊、大友柳太朗、月形竜之介)1950年(昭和25年)
東横「いれずみ判官 落花対決の巻」(片岡千恵蔵、花柳小菊、大友柳太朗、月形竜之介)1950年(昭和25年)
東横「獅子の罠」(阪東妻三郎、月形龍之介、大友柳太朗、久我美子)1950年(昭和25年)
東映「天狗の安」(阪東妻三郎、入江たか子、花柳小菊、大友柳太朗)1951年(昭和26年)
松竹「大江戸五人男」(阪東妻三郎、山田五十鈴、本松一成、進藤英太郎、大友柳太朗)1951年(昭和26年)
東映「飛びっちょ判官」(片岡千恵蔵、花柳小菊、堺駿二、原健作、加賀邦男、大友柳太朗)1952年(昭和27年)
東映「新選組京洛風雲の巻」(片岡千恵蔵、大友柳太朗、月形龍之介、花柳小菊)1952年(昭和27年)
東映「はだか大名後篇」(片岡千恵蔵、花柳小菊、大友柳太朗、田崎潤、月形龍之介)1952年(昭和27年)
東映「快傑黒頭巾」(大友柳太朗、田代百合子、喜多川千鶴、岡譲二、薄田研二)1953年(昭和28年)
東映「新諸国物語 笛吹童子」(東千代之介、中村錦之助、田代百合子、大友柳太朗、月形龍之介)1954年(昭和29年)
東映「新諸国物語 笛吹童子 第二部 妖術の闘争」(東千代之介、中村錦之助、大友柳太朗)1954年(昭和29年)
東映「新諸国物語 紅孔雀」(中村錦之助、高千穂ひづる、星美智子、東千代之介、大友柳太朗)1954年(昭和29年)
東映「水戸黄門漫遊記 女郎蜘蛛の巻」(月形龍之介、大友柳太朗、加賀邦男、千原しのぶ)1954年(昭和29年)
東映「水戸黄門漫遊記 副将軍初上り」(月形龍之介、大友柳太朗、加賀邦男、千原しのぶ)1954年(昭和29年)
東映「唄しぐれおしどり若衆」(美空ひばり、中村錦之助、大友柳太朗、西条鮎子)1954年(昭和29年)
東映「お坊主天狗」(片岡千恵蔵、大友柳太朗、中村錦之助、田代百合子、月形龍之介)1954年(昭和29年)
東映「弥太郎笠」(片岡千恵蔵、加賀邦男、大友柳太朗、三島雅夫、高千穂ひづる、山田五十鈴)1955年(昭和30年)
東映「新諸国物語 紅孔雀 第二篇 呪いの魔笛」(中村錦之助、東千代之介、大友柳太朗)1955年(昭和30年)
東映「新諸国物語 紅孔雀 第三篇 月の白骨城」(中村錦之助、東千代之介、大友柳太朗)1955年(昭和30年)
東映「新諸国物語 紅孔雀 第四篇 剣盲浮寝丸」(中村錦之助、東千代之介、大友柳太朗)1955年(昭和30年)
東映「新諸国物語 紅孔雀 完結篇 廃墟の秘宝」(中村錦之助、東千代之介、大友柳太朗)1955年(昭和30年)
東映「御存じ快傑黒頭巾 マグナの瞳」(大友柳太朗、喜多川千鶴、目黒祐樹)1955年(昭和30年)
東映「復讐侠艶録」(大友柳太朗、大川橋蔵、日高澄子、田代百合子)1956年(昭和31年)
東映「曽我兄弟富士の夜襲」(中村錦之助、大川橋蔵、東千代之介、大友柳太朗、片岡千恵蔵)1956年(昭和31年)
東映「赤穂浪士 天の巻 地の巻」(市川右太衛門、片岡千恵蔵、東千代之介、大友柳太朗、月形龍之介)1956年(昭和31年)
東映「任侠清水港」(片岡千恵蔵、中村錦之助、大川橋蔵、大友柳太朗、市川右太衛門)1957年(昭和32年)
東映「大江戸喧嘩纏」(大友柳太朗、美空ひばり、大川橋蔵、三条美紀)1957年(昭和32年)
東映「鳳城の花嫁」(大友柳太朗、三島雅夫、松浦築枝、薄田研二、田崎潤)1957年(昭和32年)
東映「新選組」(片岡千恵蔵、山形勲、月形龍之介、東千代之介、里見浩太郎、大友柳太朗)1958年(昭和33年)
東映「丹下左膳」(大友柳太朗、大川橋蔵、美空ひばり、東千代之介、月形竜之介、大河内伝次郎)1958年(昭和33年)
東映「旗本退屈男」(市川右太衛門、長谷川裕見子、桜町弘子、中村錦之助、大友柳太朗)1958年(昭和33年)
東映「丹下左膳 怒濤篇」(大友柳太朗、月形龍之介、大河内伝次郎、大川橋蔵)1959年(昭和34年)
東映「新吾十番勝負」(大川橋蔵、長谷川裕見子、大友柳太朗、桜町弘子、大河内伝次郎、月形龍之介)1959年(昭和34年)
東映「忠臣蔵 桜花の巻・菊花の巻」(片岡千恵蔵、中村錦之助、大友柳太朗、市川右太衛門)1959年(昭和34年)
東映「右門捕物帖 片目の狼」(大友柳太朗、里見浩太郎、花園ひろみ、堺駿二、進藤英太郎)1959年(昭和34年)
東映「任侠中仙道」(片岡千恵蔵、市川右太衛門、東千代之介、中村錦之助、大友柳太朗)1960年(昭和35年)
東映「丹下左膳 妖刀濡れ燕」(大友柳太朗、大河内伝次郎、月形龍之介、大川橋蔵)1960年(昭和35年)
東映「右門捕物帖 地獄の風車」(大友柳太朗、里見浩太郎、丘さとみ、青山京子、大川恵子)1960年(昭和35年)
東映「新吾二十番勝負」(大川橋蔵、沢村訥丸、丘さとみ、桜町弘子、大友柳太朗、大河内伝次郎)1961年(昭和36年)
東映「新吾二十番勝負 第二部」(大川橋蔵、大友柳太朗、丘さとみ、薄田研二、大河内伝次郎)1961年(昭和36年)
東映「赤穂浪士」(片岡千恵蔵、大川橋蔵、中村錦之助、東千代之介、薄田研二、大友柳太朗)1961年(昭和36年)
東映「丹下左膳 濡れ燕一刀流」(大友柳太朗、黒川弥太郎、大河内伝次郎、大川橋蔵)1961年(昭和36年)
東映「天草四郎時貞」(大川橋蔵、大友柳太朗、丘さとみ、三国連太郎、平幹二朗)1962年(昭和37年)
東映「お坊主天狗」(片岡千恵蔵、大友柳太朗、大川橋蔵、美空ひばり、三島雅夫、山形勲)1962年(昭和37年)
東映「十兵衛暗殺剣」(近衛十四郎、河原崎長一郎、大友柳太朗、宗方奈美)1964年(昭和39年)
NHK大河「赤穂浪士」(長谷川一夫、山田五十鈴、滝沢修、大友柳太朗)1964年(昭和39年)
松竹「殴り込み侍」(長門勇、大友柳太朗、小畑絹子、宗方勝巳、中村晃子)1965年(昭和40年)
NHK大河「源義経」(尾上菊之助、緒形拳、藤純子、大友柳太朗)1966年(昭和41年)
NHK大河「天と地と」(石坂浩二、高橋幸治、藤村志保、大友柳太朗)1969年(昭和44年)
NET「北条政子」(佐久間良子、杉浦直樹、三島雅夫、大友柳太朗、石立鉄男) 1970年(昭和45年)
NET「大忠臣蔵」(三船敏郎、市川小太夫、司葉子、大友柳太朗)1971年(昭和46年)
NHK大河「国盗り物語」(高橋英樹、松坂慶子、平幹二朗、大友柳太朗)1973年(昭和48年)
フジ「編笠十兵衛」(高橋英樹、片岡千恵蔵、大友柳太朗、中村竹弥、露口茂)1974年(昭和49年)
NTV「桃太郎侍」(高橋英樹、野川由美子、植木等、西川峰子、茶川一郎、大友柳太朗)1976年(昭和51年)
TBS「関ヶ原」(加藤剛、三船敏郎、森繁久彌、三国連太郎、高橋幸治、大友柳太朗)1981年(昭和56年)
NHK「しあわせの国 青い鳥ぱたぱた?」(田中裕子、蟹江敬三、大友柳太朗、谷真佐茂)1985年(昭和60年)