ヨイショ 1974年(昭和49年) ドラマ傑作選
東部デパートの食堂主任・新田元太郎(渥美清)は、三十数人いるウエイトレスの元締めだ。
ある休日の昼下がり、東部デパート八階の大食堂は、すでに満員の客でふくれ上がっていた。
客席では、ウエイトレスからシチューをぶっかけられた老婆(浦辺粂子)がわめいている。
「消費者は王様」と、客を大切にするのを逆手に取り、デパートを困らせて自分の孤独を
慰めようという魂胆なのだ。
続いて食堂に爆弾が仕掛けられたとの騒動が発生する。
あれやこれやで一日中、クタクタに疲れた元太郎が家に帰れば、母親(賀原夏子)は、
「誰も私をかまってくれない」とヒステリーを起こす。
真夜中には、ちょっとオツムが弱い弟(小倉一郎)から仕事のヘマを訴えられる。
外には七人の敵、家ではゴタゴタ、上からは締めつけられ、下からは突っつかれる。
ストレスに苛まれる中年男・新田元太郎は、ひたすら泣き笑いの日々を送るのだった。
レギュラーだけで、二十一人という集団ドラマ。デパートの食堂を舞台に、客の中に
あらゆる業界の人間を登場させて、現代社会の様々な断面を覗こうとする人間喜劇。
主演は渥美清。今回はデパートの食堂主任ということで「フーテンの寅」ルックから
ドレスアップして「誠実で頼りになる男」というイメージを強調している。
職場でも家庭でも大いに頼られる男が、頼られ過ぎて疲れ果てた時に、ふと漏らす呟き
「ヨイショ」を、そのままドラマのタイトルにしたのだという。
(制作)TBS(脚本)山田太一
(主題歌)渥美清「いつかはきっと」(作詞:山田太一、作曲:深町純)
(配役)新田元太郎(渥美清)元太郎の弟(小倉一郎)元太郎の母(賀原夏子)元太郎の父(今福正雄)
入江食堂部長(久米明)コック長(左右田一平)祐子(松原智恵子)省子(本田みち子)老婆(浦辺粂子)