妖怪人間ベム 1968年(昭和43年) ドラマ傑作選
それは、いつ生まれたのか誰も知らない。
暗い音のない世界で、一つの細胞が分かれて増えていき、三体の生き物が生まれた。
彼らはもちろん人間ではない。また、動物でもない。
人でも動物でもない異形の怪物、それが「ベム」「ベラ」「ベロ」と名乗る三体の「妖怪人間」である。
だが、その醜い身体の中には正義の血が隠されているのだ。
時には人々に迫害され、また時には友情を育みながら、いつか人間になれる日を夢見て
彼らは世に仇なす悪と戦い続けるのである…。
本作は、三体の妖怪人間が、人間の姿に化け、人間になる手段を探して旅をする物語。
普段は人間の姿で暮らしているが、感情が高ぶると元の醜い姿に戻ってしまう。
そのため正義感に駆られて人を助けては、忌み嫌われる暮らしを何百年も続けてきた。
人間世界から排除された彼らの切なさや哀しみの描写が強く印象に残る作品である。
物語の舞台はこれといった説明はない無国籍風で描かれ、概ねヨーロッパを思わせる建物が散見される。
海外に輸出する事を視野に入れていたのも無国籍風である理由の一つであるが、実は「黄金バット」と
同じく、本作は韓国との共同制作による作品であった。
1965年に日韓基本条約が締結された際に、両国で文化交流をという機運が高まり、日本の第一動画と
韓国の民間放送会社である東洋放送の動画製作部が共同でアニメ制作に取り組み「妖怪人間ベム」という
作品が生み出されたのである。
(制作)フジテレビ、第一動画、東洋動画(脚本)足立明
(主題歌)ハニー・ナイツ「妖怪人間ベム」(作詞:第一動画、作曲:田中正史)
(配役)ベム(小林清志)ベラ(森ひろ子)ベロ(清水マリ)