【OSI参照モデルと TCP/IPモデル】
ネットワークのプロトコル仕様は、OSI参照モデルに準拠して構築されています。
しかし、このOSI参照モデルは、あらゆるネットワークや状況に対応できるように、詳細なプロトコル群が視野に入れられ、
全体として複雑な手順を踏むことになってしまう現実がありました。
7階層という多くの手順を順番に踏んでいかなければならないため、処理に時間がかかり、分かりにくさも相まって効率が悪かったのです。
そこで、実用的な機能を厳選し、階層を減らして効率アップを目指したのが、TCP/IPモデルです。
TCP/IPモデルは、米国防総省(DoD)が、作成したモデルです。
OSI参照モデルでの「ネットワーク層」が、TCP/IPでは「インターネット層」と表現されているところから、当初からインターネットへの利用を
睨んで考案されたのではないかと思われます。
1982年、TCP/IPモデルは、UNIXの4.2BSDというOSに採用され、その後爆発的な普及をし、現在でもほとんどのネットワークで使用されています。
以下に、OSI参照モデルとTCP/IPとの関係を簡単に示してみます。
TCP/IPモデルの階層構造
TCP/IPモデルではプロトコルを4つの階層に分類します。
アプリケーション層
ウェブの閲覧、メール送信やファイル転送など、ネットワーク上で利用できるサービスに関する取り決めを定めています。
① HTTPプロトコルは、ユーザーにウェブサービスを提供する役割を担当しています。
② SMTP、POP3の各プロトコルは、ユーザーにメールサービスを提供する役割を担当しています。
③ FTPプロトコルは、ダウンロードサービスを提供する役割を担当しています。
トランスポート層
アプリケーション層とインターネット層を仲介します。
データを利用するアプリケーションを識別したり、アプリケーション間で信頼のある通信を行う手助けをします。
① TCPプロトコルは、送信側と受信側の間で、確実にデータを交換する役割を担当しています。
② UDPプロトコルは、動画配信など転送速度を重視するネットワークサービスを担当しています。
インターネット層
データをやり取りする相手のコンピュータやネットワーク機器との通信に関する取り決めを定めています。
① IPプロトコルは、IPアドレスの管理とルーティング(経路選択)を担当しています。
② ICMPプロトコルは、データのやり取りでエラーが発生した場合に対応するプロトコルです。
たとえば「Ping」コマンドには、ICMPプロトコルが使われています。
③ ARPプロトコルは、IPアドレスからMACアドレスを調べる役割を担当しています。
ネットワークインタフェース層
LANケーブルや端子(LANカード)の形状、電気信号の形式など物理的な取り決めを定めています。
またコンピュータやネットワーク機器間のデータのやり取りに関する決まり事も担当しています。
① Ethernet プロトコルは、複数のコンピュータやネットワーク機器が、効率よく通信できるように回線の通信状況を監視する役割を担当しています。
またケーブルや端子などの規格に関する取り決めも担当しています。
② PPPプロトコルは、コンピュータやネットワーク機器が一対一の関係で接続されている回線で、データをやり取りするためのプロトコルです。
電話回線を使ってインターネット接続を行うときなどに使われます。
(7)TCP/IPプロトコル
OSI参照モデルが通信プロトコルの標準となったことで、通信関連部分のソフトウェアやハードウェアを開発するエンジニアは、
この標準に準拠してシステムを開発するようになりました。
このことにより、異なるメーカや異機種のコンピュータとの通信を可能とする環境を得ることができるようになりました。
しかし、この規格どおりに通信部分を構築することが最善の方法かというと、これには多少問題があります。
OSI参照モデルとは、幅広い汎用性を実現するべくあらゆることを想定して考えられているため、その構造自体はとても複雑なものとなっています。
ですから、このOSI標準モデルのすべてを忠実に守った通信プロトコルを構築してしまうと、処理プロセスが複雑になり
処理効率も低下してしまうという問題が生じてしまうのです。
そこで、OSI参照モデルをベースに、より効率のよいプロトコルの仕様が生まれることになりました。
これが、TCP/IPです。
TCP/IPは、インターネットにおける通信プロトコルの総称で、「TCP」(Transmission Control Protocol)と「lP」(Internet Protocol)
という2つの代表的なプロトコルの名称を合体させたものですが、一般にTCP/IP通信に関わる多くのプロトコル群の総称として用いられます。
TCP/IPはインターネットプロトコルとして急速に発展し、現在では世界標準の通信プロトコルとなっています。
インターネットへのアクセスが可能なコンピュータやパソコンは、すべてTCP/IPを利用しています。
TCP/IPが急速に発展した大きな要因は、TTCP/IPがメーカ主導によって戦略的に考えられたものではないという点にあります。
すなわち、メーカや大学などに籍を置く技術者が、より使いやすく汎用度の高いものを目指して互いに知識を集積させることで考えられたプロトコルなのです。
TCP/IPに関する具体的な仕様は、RFC(Request for Comments)という通番のついた文書として管理され、誰もがこれを入手することが可能となっています。
利用者は互いに意見を交換し合い、TCP/IPプロトコルは、より効率が高く、しかも膨大なコンピュータが接続された場合でも対処できるような
新たな形態へと、つねに進化し続けています。
RFCは、インターネットで必要となるプロトコル仕様や技術、研究、実験結果などのすべての情報がまとめられている文書です。
これらはRFCxxxxといった番号で管理されています。
この文書は特定の人以外参照できないといったものではなく、インターネット上で誰でも参照することが可能となっています。
TCP/IPプロトコルも例外ではなく、その仕様はすべてこの文書によって管理されています。
TCP/IPプロトコルがOSI参照モデルに準拠していることはすでに説明しましたが、ここでは実際にTCP/IPプロトコルをOSI参照モデルと照らし合わせてみましょう。
OSI参照モデルは全体を7層構造としています。
これに対してTCP/IPプロトコルでは、OSI参照モデルの第5層から第7層までの上位層をアプリケーション層としています。
また、第4層はOSI参照モデルと同様ですが、第3層のネットワーク層をインターネット層とし、第1層と第2層の物理層とデータリンク層を
ネットワークインターフェース層としてまとめて表現することもあります。
TCP/IPプロトコルの各層には、それぞれ用途に応じて様々なプロトコルが存在し、これを必要に応じて活用することで通信が行われることになります。
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