桃の節句

今日は、ひな祭り。桃の節句とも呼びます。

古来より、女の子がいる家では、ひな壇を飾り、桃の花を生け、甘酒を飲み、お萩を食べて、娘の健やかな成長を祈願しました。
ひな祭りを、なぜ桃の節句というかといえば、桃の実が、悪霊や邪鬼を払う霊力があると古来より考えられてきたからです。

桃源郷(とうげんきょう)という言葉もあるように、もともと桃の霊力の話は、中国の神仙思想の影響下で形成された神話です。

とりわけ桃から生まれたという出生の秘密を持つ桃太郎の話は、鬼ヶ島に行って鬼達を退治し、その宝を持ち帰ってくるという、
鬼達から見れば、自国の侵略を正当化されたような実に困った征服と服従のおとぎ話となっています。

もうひとつ、日本の昔話に、「蛇のむこ入り」という話があります。
これによれば、むこが蛇だと知らずに結婚した娘が、お腹の子が蛇の子と知って、桃から造った酒をのんで蛇の子を溶かしてしまうというお話でした。
ここでも桃は、異なる者を共同体に入れないような役割を果たす力を発揮しています。

2月の節分同様、3月3日の桃の節句もどうやら、鬼にまつわる祭りのようです。
どうみても鬼を払い、撃退するための祭りだったことは明らかです。

このように考えて来るとひな祭りは、自分の大切な娘がすくすくと育てとの願いを込めた祭りのようですが、もう少しズバリと言えば、
異人としての鬼などにかわいいわが娘を取られぬために桃の霊力にあやかり、併せて家族と村々(共同体)の平安を願う行事であったと言えるでしょう。