オデュッセイア (Odysseia)(13) イリアス & オデュッセイア
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弓矢の競技
一夜あけてテレマコスは侍女達に盛大な酒宴の用意をさせた。
テレマコスは、乞食姿のオデュッセウスを連れて求婚者達の前にあらわれた。
そして、彼は自分の客だから失礼のないようにと申し渡したが、求婚者達は馬鹿にして嘲笑の声をあげただけだった。
酒宴は深まっていった。
求婚者達はいつものようにペネロペに答えはまだかと迫った。
ペネロペは、昔オデュッセウスが愛用していた大弓を両手にかかえていた。
「今日私は、この中の誰かを選ぶことに決めました。
ここにある大弓は、あの気高いオデュッセウス様が、昔使っていたものです。
この大弓に弦をかけ、十二の斧の頭の穴を一矢で射抜いた方と、私は結婚することにします」
豚飼いのエウマイオスは、泣きながら十二の斧を一列に並べた。
競技が開始された。
最初に試みたものは強弓を曲げることさえ出来なかった。
次々と挑戦したが、弦をかけることさえ出来なかった。
そのうちに、求婚者達は、こんな競技は無意味だと言いだした。
それを見てオデュッセウスは、自分にも試させて欲しいと申し出た。
求婚者達は乞食の申し出に、あざけりの笑いと、口汚い罵りの言葉を浴びせた。
ペネロペはその旅人に何故か好意を抱いていたので、その場を取りなそうとした。
そのときテレマコスが進み出て言った。
「母上、父上亡き後、館の主人はこの私です。ここは私に任せて、母上は侍女達と居間にお戻り下さい」
それまでにない毅然とした態度に彼女は驚きながらも頼もしく感じて、息子の言うとおりに自分の居間に帰っていった。
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