オデュッセイア (Odysseia)(12) イリアス & オデュッセイア
帰国
深い眠りから覚めたオデュッセウスの前に、女神アテナが現れた。
「いま、名を名のって館へ帰るのはあぶない。しばらくの間、あなたはどんなことがあっても正体を明かしてはなりません」
アテナは、オデュッセウスをみすぼらしい乞食の姿に変え、昔から彼の忠実な召使だった豚飼いのエウマイオスの小屋に連れていった。
年老いた豚飼いのエウマイオスは、乞食の旅人が自分の主人だとは気づかずに、それでも葡萄酒と痩せた小豚を料理して、精いっぱい旅人をもてなそうとした。
そこへ、息子テレマコスが旅からもどってきた。
テレマコスも旅のあいだに冒険をかさね、強いりっぱな青年になっていた。
豚飼いは、テレマコスをみると涙を流して喜んだ。
オデュッセウスは二人の会話から、この若者が自分の息子だと察したが、黙って二人の話を聞いていた。
やがて豚飼いは、ペネロペに、王子の帰国を知らせるために出ていった。
すると、傍らに女神アテナが現れ、黄金の槍で、オデュッセウスを本来の姿に戻した。
テレマコスは女神の姿が見えなかったので、突然変身した男は、神ではないかと思った。
オデュッセウスは唖然としている若者をかき抱いて言った。
「なんで私が神なものか、私こそ、お前の父、オデュッセウスなのだよ」
テレマコスには男の言葉をにわかには信じられなかった。
しかし男の逞しい胸に抱かれていると、疼くような懐しさと安堵が全身を包んだ。
オデュッセウスの長い帰国の旅の話を聞いているうちに、彼はそれが真実だとわかった。
そして彼はあらためて、父と抱きあった。二人はいつまでも涙を流しがら再会を喜んだ。
ようやく落ち着きを取り戻した二人は求婚者達への復讐の計画を念入りに練り始めた。