オデュッセイア (Odysseia) (10) イリアス & オデュッセイア
王女ナウシカ (その2) (Nausicaa)
夕方、オデュッセウスは宮殿の中へ入っていった。宮殿の広間では宴が行われていた。
オデュッセウスが、アルキノオス王の前に進んでいくと、宴の席は一瞬静まり返った。
オデュッセウスは、王の前にひざまずいて、あわれな漂流者が故郷に帰れるよう、お力をお貸しくださいと願った。
アルキノオス王は、寛大で温厚な人柄だった。
オデュッセウスに何かを感じた王は、彼を自分の隣の息子の席に座らせ、正式な客人として迎えられた。
アルキノオス王は、客人の気分を盛り上げるために競技会を命じた。
ファイアケスの勇士達が様々な種目で妙技を披露した。そして一人の若者がオデュッセウスに挑んできた。
オデュッセウスはファイアケス人の誰よりも遠くへ円盤を投げた。
そして、どんな競技でも受けてたつと宣言したが、挑戦するものはいなかった。
アルキノオス王は、オデュッセウスに見事な短剣を贈った。
王はナウシカのために、よい結婚相手をさがしていた。
その相手は、もしかしたらオデュッセウスではないかと思い、できれば王女の婿になって、この国で暮らしてほしい、と頼んだ。
しかし、オデュッセウスは妃の待つ故郷に帰らなければならなかった。
王もそれ以上は頼まなかった。そして、オデュッセウスの帰郷のために、できるだけの手助けをしようと申し出た。
翌日、アルキノオス王は、主だった者を集め、オデュッセウスの帰国に関することを話しあった。
それが終わると、あらためて歓迎の饗宴を開いた。
その席には盲目の吟遊詩人ホメロスが招かれていた。
饗宴が佳境に入るころ、吟遊詩人は歌い始めた。それはトロイ戦争にまつわる詩だった。
その歌を聴いてオデュッセウスは懐しさのあまり、涙を流し衣で拭いた。
アルキノオス王はそれを見て、オデュッセウスの素性をたださずにはおかれなかった。
「もしかしてあなたはトロイに参戦していたのですか?」
問われるままに身分を明かしたオデュッセウスは、トロイ戦争から今までの出来事を語りだした。