オデュッセイア (Odysseia)(5)
イリアス & オデュッセイア
魔女キルケ
(その2)
(KirKe)
キルケの館に着くと、キルケはオデュッセウスにも薬を入れた黄金の杯を勧めた。
彼が一気に飲み干すのを見ると、彼の肩を杖で打ちながら言った。
「さあ、お前も豚小屋へ行くがいい」
しかし、ヘルメスの薬草のおかげで魔法は効かなかった。
「やだ…どうして、私の魔法が効かないの?」生まれて初めての敗北に、動揺するキルケ。
オデュッセウスは剣を抜いて魔女に飛び掛かった。
するとキルケは驚いて彼の膝にすがりつき哀願した。
オデュッセウスは、キルケの腕をぐいとつかみ、自分の方へ引き寄せた。
「いや…… やめて……」
つぎの瞬間、 オデュッセウスは、キルケの唇を奪ったのだった!
それから二人は恋に落ちた。
豚に変えられていた仲間たちも元の姿に戻り、船に残っていた者たちも館に呼ばれて、それから一年間、彼等は夢のような甘美な生活を島で送った。
そんな島での生活も望郷の念には勝てなかった。
乗組員たちは、口々に故郷に向けて出発したいとオデュッセウスに訴えた。
それはオデュッセウスも同じ思いだった。
ある夜、彼は美女キルケとベッドを共にしながら、帰郷を許して欲しいと切々と語った。
「行ってしまうのね…… わたしを捨ててまで」
「すまん。オレはどうしても、もう一度イタケに戻りたいんだ」「そう……」
キルケには彼の心がわかっていたので、淋しさをこらえてその願いを聞き入れた。
キルケは船出の用意をしてくれた。オデュッセウスたちは帆を掲げ、出発した。
長い髪を風になびかせ、キルケはいつまでも手をふって見送っていた。