オデュッセイア (Odysseia)(4)
イリアス & オデュッセイア
魔女キルケ(その1)
(Kirke)
オデュッセウスの船は、やがて緑豊かなアイアイエの島(嘆きの島)に着いた。
オデュッセウスは、乗組員の一部を探検隊として島に送り込んだ。
森の開けた場所に、探検隊は美しい館を発見した。
その館は太陽神ヘリオスの娘で、魔法使いの美女キルケの館だった。
館の周りには獅子や狼などの猛獣が放し飼いにされていたので、かれらは恐怖にふるえあがった。
しかし猛獣たちは探検隊を見ても襲ってはこず、親しげに探検隊にじゃれついてきた。
実は、その動物たちは皆、キルケの魔法で姿を変えられてしまった人間たちだった。
機(はた)織りの最中だったキルケは、探検隊の声を聞き付けて外に出てきた。
彼女は魅力的な笑顔で探検隊を館に誘ったが、探検隊の一人だけは用心して、館の外から様子を窺っていた。
キルケの侍女たちが用意した御馳走に、隊員達は喜んでむしゃぶりついた。
しかしその御馳走には、キルケが調合した薬が入っていた。
キルケが満腹の隊員の肩を杖で打つと、彼らはたちまち豚の姿に変えられてしまった。
人間の心を持った豚たちは、一斉に鳴きわめきながら、豚小屋へと追い立てられていった。
館の外から様子を窺っていた隊員は、大急ぎで船に帰り、見たことを報告した。
報告を聞いたオデュッセウスは、すぐに剣を持って、仲間をとりかえしに出発した。
するとそこへ、ゼウスの使いのヘルメスが黄金の杖を持って現れた。
ヘルメスはキルケの扱い方を教え、魔法やぶりの薬草をくれたのだった。