オデュッセイア (Odysseia)(2)
イリアス & オデュッセイア
巨人キュクロプス
(Cyclops)
オデュッセウスの船団は、嵐に見舞われ、洋上で散り散りになっていた。
船団は九日間、あてもなく流されて、キュクロプスの島に漂着した。
オデュッセウスは、十二人の乗組員を選び、かめに葡萄酒を満たして上陸した。
海岸の近くの洞窟を見つけると、ここの主人にあって、食料をわけてもらおうと考えた。
しかし、夕方帰ってきたのは、おそろしい 巨人キュクロプスだった。
キュクロプスは、オデュッセウスたちを見つけると、入り口を巨大な岩で塞ぎ、彼らがにげられないようにしてしまった。
そして彼は、いきなり二人の乗組員をわしづかみにすると、岩壁に叩き付けて殺した。
それから二人をくし刺しにすると、火であぶり、頭からバリバリと食ってしまった。
オデュッセウスは、脅え絶望する部下を落ち着かせると、思いきって巨人に語りかけた。
「無断であなたの洞窟に入ったことは謝る、その代わりこの葡萄酒を差し上げるから、どうか私達を解放していただきたい」
巨人は葡萄酒を受け取ると一気に飲み干した。「これはうまいっ!もうひとつよこせ」
そう言いながら、キュクロプスは飲み馴れない葡萄酒の酔いで、大いびきをかきだした。
巨人が眠り込むと、オデュッセウスたちは、大きなオリーブの木がおいてあるのをみつけて、先を尖らせ、四人掛かりで担ぎあげると、巨人の目玉に突き立てた。
巨人は飛び起きて、目を押さえながら悲鳴をあげると、狂ったように洞窟の外に飛び出した。
オデュッセウス一行は、夢中で走って船へもどり、全員で船を漕いで島を離れた。
怒りに狂ったキュクロプスは近くの岩山を千切って盲滅法に海に向かって投げつけた。
そのうちのいくつかは船の近くに落ちて、あやうく命中するところだった。
オデュッセウス一行はこうして辛うじて逃げ延びたが、喜びと仲間を失った哀しみに耐えて航海を続けた。
だが息子キュクロプスの災難に怒った海神ポセイドンは、それ以来オデュッセウスに深い悪意を抱くようになった。