イリアス(Iliad)(15)  イリアス & オデュッセイア
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トロイ戦争終幕  (The epilogue of Trojan War)

トロイ人はせっせと木馬を城内に運び込み、勝利を祝って酒宴を開くことにした。

神々への供え物として木馬は花々で飾られ、人々は終戦の祝いに浮かれて騒いだ。

自分たちの完全勝利にすっかり酔ってしまったトロイ人たちは夜中まで酒を飲みつづけ、すっかり酔いつぶれてしまった。

さて、この木馬にはギリシア兵が満載されていた。
トロイ兵が寝静まった後、シノンの手引きでギリシア兵は木馬の中から続々と出てきて、沖合いに停泊しているアガメムノンの本隊に狼煙を送った。

アガメムノン率いるギリシア軍が城に近づくのに合わせ、城内のギリシア軍は門の閂を外した。
こうしてトロイ城内にギリシア兵が殺到し、酔いつぶれているトロイ兵を片っ端から殺していった。

不意打ちをくらったトロイ軍に抗うすべはなく、またたくまに城市は落ちた。
トロイ王プリアモスも、ギリシア軍の勇士に討たれ、ここにトロイの命運は尽きたのである。

ヘレネは王宮に隠れていたが、メネラオスの手で見つけられた。
ヘレネは覚悟を決めていたが、彼女は今尚世界一の美女だったのでメネラオスは彼女を許しスパルタへ連れて帰った。

さてしかし、ギリシア軍の将兵たちには未だ試練が残っていた。

アガムノンは大変な財宝とプリアモス王の娘カッサンドラを伴ってミュケナイに帰ったが、正妻のクリュタイムネストラの手に掛かってカッサンドラと伴に殺害されてしまった。

ディオメデスもまたようやく故郷に帰り着いてみると、彼の王国は強奪者に支配されていた。
オデュッセウスも、最後には故郷イタケに還れたが、それまでの二十年は数々の試練と冒険をしなければならなかった。

老ネストルは神々に愛されていたので短期間で故郷ピュロスに帰還でき、息子たちにかこまれ人々の尊敬を受けて長生きしたが、トロイで戦死した長男アンティロコスをその地に遺したままだったので悔やみつづけていた。

長い年月をかけたギリシア軍とトロイ軍の戦争はこうして終わったが、双方が得たものは悲しみと後悔だけであった。