イリアス(Iliad)(14)  イリアス & オデュッセイア          
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シノン(Sinon)


トロイ軍が浜辺を探索すると、一人のみすぼらしい乞食のような男が縛られていた。

男はトロイ王プリアモスの前まで引っ立てられて、尋問を受けた。

プリアモス「そなたは何者じゃ?」

シノン「私はギリシア軍の兵士でシノンと申します。」

プリアモス「なぜ一人浜辺に残されていたのか?」

シノン「それは、私がオデュッセウスに憎まれていたからです。
オデュッセウスは機会あれば私の口を封じるよう狙っていたのです。

ギリシア軍は将軍たちの仲間割れによってすっかり分裂状態になってしまい、とうとう解散することになったのです。
しかし、嵐が起こってギリシア軍の出航はできそうにありません。

神官が神託を伺ったところ、人身御供を一人捧げればこの嵐はやむとの事。

オデュッセウスはここぞとばかりに私を神に捧げる生贄にしてしまったのです。
だから、私はムチでさんざん打たれてこの浜辺に取り残されたというわけです。」

その男の話は真に迫っていたので、プリアモス王を始めとするトロイ兵たちはすっかりその話を信じ込んでしまった。

プリアモス「それでは、この木馬は一体何なのじゃ?」

シノン「これはアテナ神のお告げによって作られたものなのです。
アテナ神に神託を伺ったところ、女神は一つの木馬を作ることを命じ、そしてこの木馬がトロイに運ばれれば、二度とギリシア軍はトロイを攻め落とすことが出来ないと宣言しました。
だからギリシア軍は、木馬を決してトロイ城内に運ばせないように、こんなに大きく作ったのです。」

プリアモス「そうか、それではこの木馬をトロイ城内に運べば我らの勝利は間違いないというわけか」

プリアモス王は「これはギリシア軍が神に捧げたものだ。傷つけてはならんぞ、城内に運び込め」と言った。
その方針に反対のものもいたが、王は聞き入れなかった。