イリアス(Iliad)(12)  イリアス & オデュッセイア
直線上に配置

 アキレウスのかかと (Achilles' heel)

ヘクトルが戦死したのちも、トロイ戦争は引き続いて戦われた。

ただ、総指揮官を失ったトロイ軍は、苦戦することが多く、トロイの運命は風前の灯のように見えた。

しかし、ギリシア軍最強の戦士アキレウスにも死の運命が近づきつつあった。

その日、ギリシア軍を指揮するアキレウスは、トロイ軍を城壁の下まで追い詰めていった。

彼が城内へ乱入して戦っているのを見たトロイ王子パリスは、太陽神アポロンに導かれて毒矢を放った。

アポロン「よいかパリス、アキレウスは幼い頃ステュクスの河に体を浸かったので、人間の武器では傷つけることが出来ない。
しかし、踵の部分だけは浸からなかったから、ここだけは傷つけることが出来る。
その毒矢で踵の部分を狙うのだ。」

こうしてパリスは毒矢を放ち、アポロンに導かれた矢は過たずにアキレウスの踵に命中した。

弱点の踵を打ち抜かれたアキレウスは戦車から転がり落ち、そこへパリスが第2の矢を放ってアキレウスに止めを刺した。

多くの武将を討ち取り、無敵の戦士といわれたアキレウスにもとうとう最期のときが来たのである。

アキレウスが討死したのを見たギリシア軍は浮き足立ってトロイ城内から撤退し、トロイは再び門を閉じて態勢を整えたのだった。