イリアス(Iliad)(7)  イリアス & オデュッセイア
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アテナ&ディオメデス (Athena and Diomedes)

トロイ戦場で活躍したのがアルゴスの王ディオメデスである。

彼は黒豹のように敏捷かつ強靭な武技を持っており、この戦いで多くの戦果を上げた。

トロイ方の武将で弓の名手といわれたパンダロスがメネラオスに弓を射掛け、彼に傷を負わせた。
ディオメデスはこれを見てパンダロスに一騎打ちを申し込むべく、トロイ軍に突進して片っ端から雑兵をなぎ倒していった。

パンダロスは先ほどメネラオスを倒したのと同様に矢を放ったが、ディオメデスはすばやく身をかわして逆に槍を投げつけた。
槍は狙いどおり命中し、パンダロスの顔をぶち抜いて彼を絶命させた。

さらにディオメデスの前にはトロイ方に味方する軍神アレス自らが立ちはだかったが、ディオメデスにもギリシア方に味方するアテナの加護がついていた。

ギリシア神話のセオリーとして、アレスとアテナの戦いは必ずアテナの方が勝利するという原則があった。
案の定アテナの加護を得たディオメデスは軍神アレスさえも撃退し、アレスは「兵士一万人に匹敵する」泣き声をあげながら戦場から後退した。

神さえも退けるディオメデスの武力の前にトロイ勢はすっかり恐れをなしてしまい、戦局はギリシア勢が圧倒的勝利を収めるかのように見えた。

こうして、ギリシア軍は当初優勢に戦いを進めていたが、さすがに主力であるアキレウスを欠いた状態では、トロイ軍に決定的なダメージを与えることが出来なかった。

しばらくすると今度は逆にトロイ勢が勢いを取り戻し、ギリシア軍をじりじりと後退させていった。
しかも、今回はトロイ勢の背後にゼウスがついていたので、ギリシア勢を応援していたアテナもうかつに手を出すことが出来ない。

ギリシア勢は後退を余儀なくされ、ついに自分たちの船のところまで押し返されてしまった。

ギリシア船は長期戦に備えて城塞のように防御力が強化されており、戦に敗れたギリシア兵はわれ先にと自分たちの船に逃げ込んだ。
今度は逆にギリシア側が篭城せざるを得なくなったのである。