アリダ・ヴァリ(Alida Valli)

生年月日 : 1921/05/31
出身地 : イタリア/ポーラ
没年 : 2006/04/22

1936年、エンリコ・ガッツォーニ監督の「二人の軍曹」で映画デビュー。
1947年、グレゴリー・ペックと共演で「パラダイン夫人の恋」に出演し、一躍注目される。

「パラダイン夫人の恋」では、夫殺しの疑いをかけられた未亡人をヴァリが演じ、その美貌に
惹かれて無罪を信じる弁護士をペックが演じている。

1949年、キャロル・リード監督の「第三の男」に出演、映画は大ヒットし、国際的なスターとなる。
1954年、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「夏の嵐」に出演。

「夏の嵐」では、年下の男、しかも敵国の士官との恋に狂うイタリア伯爵夫人を演じ、激しい情熱
のたぎりとともに、盛りを過ぎようとする女の焦りと哀しみを見事に表現した。


代表作品

      第三の男(THE THIRD MAN)1949年(英)カンヌ国際映画祭グランプリ

第二次大戦後、連合軍管理下のウィーン。米国作家ホリー(コットン)は、友人ハリー(ウェルズ)が
死んだと聞かされ、埋葬に立ち会う。

だが、その死に疑問を抱き、ハリーの愛人(ヴァリ)と会った際に、ハリーが生きていることに気づく。
彼の死は偽装工作だったのだ。

自分の死を偽装し悪事を働く男とその愛人、男への友情と正義感のあいだで揺れ動く作家の三人の
人間模様が描かれる。
愛人を演じたヴァリの冷たい美貌が際立っている。ラストシーン、相手の男(コットン)に一瞥も
与えずに前を見て歩み去る、彼女の憮然たる表情が印象的だ。

(監督)キャロル・リード(CAROL REED)(出演)オーソン・ウェルズ(ORSON WELLES)
ジョゼフ・コットン(JOSEPH COTTEN)アリダ・ヴァリ(ALIDA VALLI)
       
       
    夏の嵐(Senso)1954年(伊)

19世紀、戦時下のベネチア。伯爵夫人リヴィア(ヴァリ)は、敵方のオーストリア軍士官と激しい恋に落ちる。
密会を重ね、恋の虜となったリヴィアは、従兄から預かった軍資金を、男が軍籍から抜け出るために用立てる。
だが、やがて男は心変わりし、リヴィアの愛は憎悪に変わる。

敵方の士官への盲目の恋のために、イタリアの同胞を裏切り、また士官の心変わりを知るや、軍に密告して
死に追い込むという伯爵夫人の業を、アリダ・ヴァリが凄絶なまでに演じている。

貞淑な妻が抑えきれぬ不倫の愛にのめり込み、雨の中を狂ったように男の姿を求めて彷徨するシーン、
やがて心変わりを知り錯乱する場面での、ヴァリの鬼気迫る熱演が見ものである。

(監督)ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti)(出演)アリダ・ヴァリ(Alida Valli)
ファーリー・グレンジャー(Farley Granger)マッシモ・ジロッティ(Massimo Girotti)
 
       
       
      かくも長き不在(Une aussi longue absence)1961年(仏)カンヌ国際映画祭グランプリ

パリ郊外でカフェを営むテレーズ(ヴァリ)はある日、店の前を通る浮浪者に目を止める。
その男は16年前にゲシュタポに連行され、行方不明になった夫アンリにそっくりだった。

だが頭に傷跡のある、その浮浪者は記憶喪失者であった。テレーズは、何とかして
浮浪者の記憶を呼び戻そうとして、彼を食事に招く。

ジュークボックスの音楽に合わせて、無心に寄り添いダンスを踊る二人。テレーズは、
まさに彼こそ自分の夫だと確信する。
だが、ある日男は「あなたはとても親切な人だ」とテレーズに告げ、去って行ってしまう。
戦場のシーンなどは一切ないが、戦争の傷の深さがひしひしと伝わる反戦映画の秀作である。

(監督)アンリ・コルピ(Henri Colpi)
(出演)アリダ・ヴァリ(Alida Valli)ジョルジュ・ウィルソン(Georges Wilson)
       

二人の軍曹(The Two Sergeants)1936年
残忍王サラディン(The Ferocious Saladin)1937年
ひと月に一千リラ(A Thousand Lire a Month)1939年
マノン・レスコー(Manon Lescaut)1940年
小さな昔の世界(Little Ancient World)1941年
われら生きるもの(Noi Vivi)1942年
ウジェニー・グランデ(Eugenie Grandet)1946年
パラダイン夫人の恋(The Paradine Case)1947年
奇跡の鐘(The Miracle of the Bells)1948年
第三の男(The Third Man)1949年
白銀の嶺(The White Tower)1950年
奇蹟は一度しか起こらない(Les miracles n'ont lieu qu'une fois)1951年
わたしの罪ではない(Il mondo le condanna)1953年
われら女性(Siamo Donne)1953年
夏の嵐(Senso)1954年
旅路はるか(L'amore piu bello)1957年
さすらい(Il grido)1957年
青い大きな海(La grande strada azzurra)1957年
月夜の宝石(Les bijoutiers du clair de lune)1958年
顔のない眼(Les yeux sans visage)1960年
かくも長き不在(Une aussi longue absence)1961年
楽しい泥棒日記(The Happy Thieves)1961年
竜騎兵総攻撃(El valle de las espadas)1963年
アポロンの地獄(Edipo re)1967年
暗殺のオペラ(Strategia del ragno)1970年
高校教師(La prima notte di quiete)1972年
新エクソシスト/死肉のダンス(Lisa e il diavolo)1974年
レディ・イポリタの恋人/夢魔(L'anticristo)1974年
蘭の肉体(La Chair de l'orchidee)1975年
1900年(Novecento)1976年
カサンドラ・クロス(The Cassandra Crossing)1976年
サスペリア(Suspiria)1977年
レイプ・ショック(Suor Omicidi)1979年
ルナ(La Luna)1979年
インフェルノ(Inferno)1980年
女テロリストの秘密(Segreti segreti)1985年
背徳の女/地獄を見た女たち(Le jupon rouge)1987年
湖畔のひと月(A Month by the Lake)1995年
サスペリア2000(Fatal frames: Fotogrammi mortali)1996年
セマナ -血の7日間-(Semana Santa)2002年