暴れん坊将軍 1978年(昭和53年) ドラマ傑作選
紀州藩主から八代将軍となった吉宗(松平健)は、駕籠で江戸城へ向かう。
だが、その吉宗の駕籠に駆け寄り、直訴しようとする娘がいた。
この時代、直訴は厳罰に処せられるのがならわしだった。
しかし、訴えは一応取上げられるため、一身を犠牲にした直訴者が絶えなかった。
直訴に及んだその娘・お千代が危うく手討ちになる寸前、吉宗が制止する。
聞けば、お千代の父親は、油蔵に放火をした罪で南町奉行所に捕われているという。
吉宗は、命懸けで訴え出た娘の願いを聞き、父親の無実を晴らすべく立ち上がる。
江戸の平和のために徳川吉宗(上様)が世にはびこる悪を「成敗」するストーリー。
普段吉宗は江戸の町へお忍びで出向くときには「徳田新之助」という偽名を名乗り、
肩書きも「貧乏旗本の三男坊」と称し、江戸の庶民は、彼が将軍であることを知らない。
但し、町の火消し・辰五郎ら一部の者だけが、新之助が吉宗だということを知っている。
彼の正体を知る数少ない人々との絶妙な信頼関係や、町の火消し「め組」の人たちとの
ホームドラマのような要素も加わり、人間吉宗の魅力が至る所にちりばめられている。
ドラマの最後、将軍自らが、悪人を成敗する時の決め台詞と殺陣のシーンは迫力がある。
まず、将軍の登場に驚く悪玉を「余の顔を見忘れたか!」と一喝して平伏させる。
悪玉は一度は平伏するも「上様の名を騙る不届き者」「上様とて構わぬ」などと
結局反逆し、手下に命じて吉宗を襲わせる。
テーマ音楽をバックに、吉宗が手下どもをなぎ倒していき、悪玉に迫る。
最後は、悪玉自ら吉宗に斬りかかるも、返り討ちに遭って殺陣終了。
こうした将軍自らが悪を成敗するという痛快無比な設定が絶大な人気を博した。
また吉宗を演じる松平健が、年齢と共に「成長する吉宗」を同時進行の形で
番組の中で見せていることが、この番組の人気と長寿を支えている。
本作はシリーズ化され、約27年間、全832話が制作されるという長寿番組となった。
(制作)テレビ朝日、東映(脚本)小川英、杉村のぼる
(主題歌)北島三郎「炎の男」(作詞・作曲:原譲二)
(配役)徳川吉宗(松平健)じい:加納五郎左衛門(有島一郎)大岡忠相(横内正)町火消し:辰五郎(北島三郎)
辰五郎の妻:おさい(春川ますみ)め組の小頭:源三(園田裕久)藪田助八(宮内洋)おその(夏樹陽子)
伊豆屋治兵衛(武内亨)お千代(佐藤美鈴)