阿部一族   1995年(平成7年)       ドラマ傑作選

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寛永18年(1641年)春、肥後の藩主・細川忠利(仲谷昇)が病死した。

忠利は家臣らに殉死を禁じたが、恩のあった家臣らは次々に殉死。


新藩主で息子の細川光尚(青山裕一)は殉死差止めの令を出した。

忠利の言いつけを守ってきた阿部弥一右衛門(山﨑努)だったが、臆病者扱いされ、

家族の名誉のため殉死を決心する。


通常、殉死者は武士の鑑と謳われ、領地や家格はその跡取に相続される。




だが今回は、新藩主の命に背いたことが問題になり、その領地は五人の息子兄弟に分割、

結果として阿部家の家格は著しく低下することになる。

長男・権兵衛(蟹江敬三)はこの沙汰に不満を持ち、忠利の一周忌法要に光尚の目の前で髻(もとどり)を

切るという暴挙に出る。怒った新藩主は彼を侍として扱わず、切腹ではなく打首とする。

度重なる恥辱に、もはやこれまでと覚悟した阿部一族は、権兵衛の首を取り戻し、次男・弥五兵衛(佐藤浩市)

を中心に館に立てこもる。昨日まで藩友であった討ち手たちとの、血を血で洗う壮絶な闘いが始まった…。



原作は森鷗外の同名短編小説。江戸時代初期に肥後細川藩で起きた、藩の重職であった阿部一族が

上意討ち(主君の命令による処断)で全滅した事件を題材にしている。


小説が発表された大正二年(1913年)は、明治天皇の崩御に伴い、陸軍大将・乃木希典が殉死した直後だった。

鴎外は、近代化が進んだはずの時代に突如として現れた殉死という古いモラルや、それに熱狂する世間に対し、

江戸時代の事件を借りて「個人の尊厳や人間性を無視する狂気」を痛烈に批判・告発したのである。


主人公の阿部弥一右衛門は、主君忠利の死に際し,殉死を願ったが許されず,生き延びる。

しかし、周囲の武士たちから「命を惜しんでいる」「臆病者」と理不尽な誹謗中傷を受けてしまう。

個人の「生きたい」「遺言を守る」という真っ当な人間性や論理は無視され「周囲が死んでいるのだから

お前も死ぬべきだ」という冷酷な同調圧力に押し潰され、ついには切腹して果てる。


世間に認められない形で父親が殉死したため、その後、阿部一族は冷遇され、厳しい処置を受ける。

彼ら一族は最後に戦って死ぬことを選んだが、この武士の意地とは、女子供も含め、一族全員の命まで

巻き添えにしても守られるべきものだったのだろうか。

武家の意地を貫いた肥後武士の滅びの美学を讃える者もいるが、そうした意地や面目という大義名分に

縛られ、破滅へと突き進んでしまった人間の愚かさ、不条理を痛感せずにはいられない。



(制作)フジテレビ、松竹(原作)森鴎外(脚本)古田求(番組名)金曜エンタテイメント

(配役)阿部弥一右衛門(山﨑努)妻・キヌ(渡辺美佐子)阿部権兵衛(蟹江敬三)阿部弥五兵衛(佐藤浩市)細川忠利(仲谷昇)

細川光尚(青山裕一)林外記(石橋蓮司)柄本又七郎(真田広之)竹内数馬(杉本哲太)語り(中村吉右衛門)


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