雨の降る駅 1986年(昭和61年) ドラマ傑作選

保之(田村正和)と水絵(大原麗子)は、同じ高校の先輩・後輩。
二人は付き合い初めて九年になる。ついたり離れたりの九年だったが、
今度こそ二人の関係にケリをつけようと、水絵は保之と最後の旅に出た。
雨の日、駅まで来た二人はさりげなく別れようとお互いに約束していた。
そこに、雨に降られ駆け込んできた若い男女(柳葉敏郎、渡辺典子)と遭遇する。
むつまじく旅を楽しむ若い男女の姿に、二人はふと、自分たちにもあんな時期が
あったのだと、昔の時代を思い返すのだった。
物語の舞台は「雨泊駅」という上越線沿線に設定した架空の駅である。
駅はまさに別れと出会いの場所だが、大原麗子の役柄は、九年の付き合いの中で
二度の別れを経験し、今また、三度目の別れを決意して旅に出た女だ。
この愛の終止符を打とうとしている大原と田村のカップルを中心に、若い男女、
そして捨てた子供に会いに来た佐和(島倉千代子)の三組の愛の人生模様が、
列車を待つ時間の経過とともに繰り広げられる。
雨がずっと降り続いているのが効果的で、三組の対照的な登場人物がそれぞれの
持ち味を出し、小味のきいたしゃれたメロドラマに仕上がっている。
そしてドラマの舞台が駅の待合室ワンセットという、まるで一幕の舞台劇を
観ているかのような緊密さで最後まであきさせない。
本作は、ドラマの可能性を模索する作り手の意欲が感じられる作品となっている。
(制作)TBS(脚本)鎌田敏夫
(配役)山添保之(田村正和)佐々木水絵(大原麗子)藤井佐和(島倉千代子)若い男(柳葉敏郎)若い女(渡辺典子)
駅員(左とん平)蕎麦屋店員(千石規子)キオスク店員(佐々木すみ江)老人(吉田義夫)乗客(北野武)
