オードリー 2000年(平成12年) ドラマ傑作選
昭和28年9月、太秦で一人の女の子が生まれ、美月(岡本綾)と名付けられる。
命名したのは、隣の老舗旅館「椿屋」の女主人・滝乃(大竹しのぶ)。
差し置かれた産みの母・愛子(賀来千香子)の心中は穏やかではない。
アメリカ育ちで翻訳家の父・春夫(段田安則)は、そんなことも気にかけず、
美月をオードリー・ヘプバーンにちなみ「オードリー」と呼んで可愛がる。
(オードリー・ヘプバーン主演の「ローマの休日」は、翌年の昭和29年4月、
日本でも封切りとなり、大評判となった)
やがて美月は椿屋で寝起きするようになり、滝乃は彼女のために、当時は
超高級品であったテレビまで買い与えた。
チャンバラ映画が娯楽の王様としてまばゆかったこの時期、椿屋には多くの
映画関係者が出入りしていた。
椿屋の映画好きの仲居たちに連れられて撮影所に出入りするようになった美月は、
やがて自らも女優を夢見るようになるのだった。
映画の街、京都・太秦に生まれたヒロインが、実母と養母、対照的な価値観を持った
二人の母に育てられ、やがて映画の世界に半生を賭けてゆく姿を描く。
放映は、2000年10月から2001年3月まで。二つの世紀をまたぐ本作は「新旧二つのもの」が対比される。
ドラマは冒頭から、賀来千香子演じるヒロインの実母と、大竹しのぶの養母の対立を軸に展開する。
戦後民主主義を絵にかいたような実母と、老舗旅館の女主人で明治女を思わせる養母。
もの心ついたヒロインは「二人の母」のはざまで揺れ、傷つき、やがて映画人として自立していく。
だが、チャンバラ全盛の太秦から斜陽の太秦へ、映画産業の移ろいとともに、テレビが伸びてくる。
二つのメディアの新旧対比もドラマの背景を形作っている。
本作は、映画に魅せられた女性の半生記だが、日本映画の黄金期をほうふつとさせる劇中劇の数々が、
もう一つの見どころになっている。挿入される劇中劇は、約20タイトルにものぼる。
「銭形平次」「宮本武蔵」「月光仮面」など、おなじみのヒーローも登場。
世紀をまたぐ朝ドラは、そのまま戦後日本の映像史にもなっている。
(制作)NHK大阪(脚本)大石静
(主題歌)倉木麻衣「Reach for the sky」(作詞:倉木麻衣、作曲:大野愛果)
(配役)佐々木美月(岡本綾)佐々木愛子(賀来千香子)佐々木春夫(段田安則)佐々木梓(茂山逸平)
吉岡滝乃(大竹しのぶ)宮本君江(藤山直美)錠島尚也(長嶋一茂)栗部金太郎(舟木一夫)桃山剣之助(林与一)
幹 幸太郎(佐々木蔵之介)杉本英記(堺雅人)関川 徹(石井正則)黒田茂光(國村隼)中山晋八(仁科貴)
Reach for the Sky(倉木麻衣 オードリー主題歌)