珈琲屋の人々 2014年(平成26年) ドラマ傑作選
東京下町の商店街。その中にひっそりとたたずむ、レトロな喫茶店「珈琲屋」。
店主・宗田行介(高橋克典)が淹れるコーヒーを楽しみに、人々は珈琲屋を訪れる。
そんな行介には大きな心の傷があった。彼は過って人をあやめた過去があった。
刑務所に服役中、店主だった父が亡くなり、行介は出所後、店を継いだのだ。
ある日、「冬子」と名乗る女性(木村多江)が店を訪れ、ブレンドを注文する。
冬子は行介によって命を奪われた男性の妻だった。
行介は事情を知らないまま、カップを差し出す…。
東京の下町にたたずむレトロな喫茶店を舞台にしたヒューマンドラマ。
これまで「特命係長・只野仁」など、アクション系俳優のイメージが強かった高橋克典が、
今回は寡黙で陰がある喫茶店のマスター・行介役で新境地を見せている。
殺人歴があり「自分は幸せになる資格がない」と、ストイックな生き方を、頑ななまでに
実践している。高橋の抑えた演技が、切なさ、やるせなさを感じさせる。
相手役は、木村多江。行介に夫を殺された看護師・冬子という役どころ。
殺した男は出所後、都内の商店街でコーヒー専門の喫茶店を切り盛りしている。
「いじわるな思い」を抱きつつ、客を装って殺した側を観察に。
冬子は、ひどい人間だと思っていた行介が物静かで優しいことに驚く。
憎しみたい相手が善良な人だと知って、自らの心の持っていきどころを無くしてしまう。
憎しみ・恨みを心の支えにして生きてきた冬子は、これまでの生き方を変える岐路に立つ。
物語は、派手さはなく、終始落ち着いた印象で、しみじみと味わい深く描かれている。
まさに一杯の美味しいコーヒーのような、滋味にあふれた一作となっている。
(制作)NHK BSP、テレパック(原作)池永陽(脚本)渡辺千穂
(配役)宗田行介(高橋克典)柏木冬子(木村多江)島木雅大(八嶋智人)秋元英治(小林稔侍)
天野元子(渡辺えり)天野直道(岩松了)「伊呂波」女将・木綿子(壇蜜)