振り返れば奴がいる 1993年(平成5年) ドラマ傑作選
アメリカの大学から天真楼病院にやってきた青年医師・石川玄(石黒賢)は衝撃を隠せなかった。
そこには苦しむ患者を無視するかのように平然と振る舞う医師、司馬江太郎(織田裕二)がいた。
司馬の腕は超一流だが、医師としてのモラルは低い。
たとえば、助かる可能性がある場合は手術をするが、その見込みのない患者は、見殺しにするのだ。
患者のために、常に最善を尽くすべきだと考える石川にとって、司馬の存在は医師として許せなかった。
やがて二人は、医師としての信念を巡って、激しく衝突を繰り返していくのだった。
大病院を舞台に、性格の対照的な二人の医師の戦いが描かれる。
患者をいたわり、誠意ある治療を信条とする外科医・石川。
一方、勤務時間以外は、重症患者が運ばれても手術はしない。
延命治療を否定し、治らない患者は死なせろと言う冷酷な外科医・司馬。
医師としても人間としても傲岸不遜な司馬の言動が許せない石川は、
あらゆる手段をもって、司馬を病院から追い出そうとする。
そして、ある事件で司馬の過失を証明してみせ、ついに勝利する。
ある事件とは、司馬が末期がん患者を「安楽死」させてしまうのである。
患者を助けられないと判断した司馬は、それ以上無意味に延命することで
植物状態となることを予想し、その患者の蘇生処置を放棄してしまったのだ。
その結果、司馬は責任を問われ、病院を追われてしまう。
本作のテーマのひとつに「尊厳死」の問題がある。
それは、死を望む患者の意思を優先するべきなのか。
それとも、患者の延命を望む家族の意思を優先するべきなのか…。
医療が進歩している現代にあってもなお、患者が安楽死を望んだとしても、
尊厳をもって死を迎えることは、難しくなっているのが現状である。
(制作)フジテレビ、共同テレビ(脚本)三谷幸喜
(配役)司馬江太郎(織田裕二)石川玄(石黒賢)中川淳一(鹿賀丈史)平賀友一(西村雅彦)
大槻沢子(千堂あきほ)峰春美(松下由樹)星野良子(中村あずさ)