半七捕物帳 1953年(昭和28年) ドラマ傑作選
神田川で、禁断のむらさき鯉を釣り上げた遊び人の藤吉。
味をしめた藤吉は、今夜もまた川に出かけて行った。
その留守に、怪しい女が訪ねてきて、その鯉を持ち去ってしまった。
家に戻った藤吉は、首をかしげながら女房のお徳に言った。
「ゆうべ釣ったのは雄の鯉で、その雌が取り返しに来たんじゃあるめえか」
――その翌日、川に藤吉の死体があがった。
事件の詮議にあたったのは、神田三河町の岡っ引き・半七であった。
岡本綺堂原作の捕物帳で、テレビドラマ初の時代劇である。
第一話「むらさき鯉」は、御禁制の鯉を密漁していた遊び人・藤吉が何者かに殺害される。
事件の謎を巡って半七親分が捜査に乗り出す。
半七親分に新国劇の笈川武夫が扮し、子分の多吉を俳優協会の外野村晋が演じた。
また、遊び人の藤吉に前進座の若宮忠三郎、その女房役に文学座の堀越節子という配役だった。
いずれも舞台出身の俳優ばかりだが、これは当時の映画会社がこぞって映画俳優の
テレビ出演を禁止していたからである。
さらにこの年、1953年9月、大手映画会社の五社が協定を結び、映画俳優だけでなく、
映画スタジオや映画フィルムの貸し出しも禁止するに至った。
これは急速に勃興するテレビに対抗し、映画会社の既得権を守ろうとしたのだが、
この協定はテレビマンたちの闘志をかえってかきたてることにもなった。
(制作)NHK(原作)岡本綺堂(脚本)西川清之
(配役)半七(笈川武夫)多吉(外野村晋)藤吉(若宮忠三郎)お徳(堀越節子)
お新(綱島初子)お糸(北原文枝)冨蔵(池田忠夫)幸次郎(平岡鯛二)