日日の背信 1960年(昭和35年) ドラマ傑作選
土居広之(原保美)は、国内でも著名な大手出版会社の社長である。
彼には病気がちの妻がいたが、生活には、何不自由なく暮らしていた。
あるとき土居は、山の温泉宿で行きずりに幾子という女(池内淳子)に出会う。
彼女は、銀座で宝石商を営む六角庫吉(若宮忠三郎)のめかけであった。
六角は横暴だったが、不幸な境遇から彼に救われた幾子は忍従の生活を送るばかり。
幾子は六角からタバコ屋をまかされていた。
土居はそんな女の姿に心をひかれ、その店に足繁く通った。
やがて、お互いに逢瀬を重ねるようになり、ある夜二人は結ばれる。
だが、土居の楽しい毎日は、妻への背信に悩む日々でもあった。
1956年毎日新聞に連載された丹羽文雄の同名小説のドラマ化。
病身の妻を抱える壮年実業家と、宝石商の愛人との不倫を描く。
本作は、主婦を対象とした、いわゆる「昼メロ」の最初の作品とされ、
昼間の番組にもかかわらず、驚異的な最高視聴率26.2%を記録。
刺激的な愛欲シーンは賛否両論を巻き起こし、以後、不倫や浮気を
モチーフにしたドラマは「よろめきドラマ」と呼ばれた。
昼メロ人気には、当時の家電製品の普及で、主婦にゆとりが
出来たことも関係しているようだ。
「よろめきドラマ」は、そんな昼下がりのひと時をもてあます
彼女たちの気持ちを、上手く汲み上げたとも言える。
この番組のヒットをきっかけに、昼メロが各局で次々とスタート。
1965年「愛染かつら」の長内美那子、1969年「女の絶唱」の
三ツ矢歌子ら、昼メロから数多くのヒロインが生まれた。
(制作)フジテレビ(原作)丹羽文雄(脚本)浅川清道
(配役)屋代幾子(池内淳子)土居広之(原保美)土居知子(喜多道枝)六角庫吉(若宮忠三郎)