家へおいでよ 1996年(平成8年) ドラマ傑作選
寺崎悟(杉浦直樹)は、私立の女子大でフランス語を教えている教授である。
女房からは逃げられ、いまは古い洋館で孤独な一人暮らしをしている。
そんなある日、寺崎は新宿の定食屋で、27歳の女性(鈴木砂羽)と相席になる。
外は雨で、彼女はびしょぬれだった。寺崎は彼女に、車で送ってやろうと言う。
その女性はどこでもいいと答える。しいて言えば、寺崎の家へ行きたいらしい。
訳アリの孤独な身の上だと言う彼女は、洋館のひと部屋を借りることになった。
古い洋館に暮らす大学教授と、偶然下宿することになった若者たちが繰り広げる
ユーモアとペーソスあふれる群像ドラマ。
やがて、女性の友だちだというスナックで働く少女や、孤児院育ちの25歳の青年も
越してきて、寺崎の洋館は若者たちでにぎやかになるのだった。
みんなが引っ越してきた晩、洋館の庭で、にぎやかなパーティーが行われる。
同居人たちが打ち合わせをして、寺崎への感謝を込めて開いてくれたのだ。
だがこれで、寺崎の一人暮らしの孤独が癒されたかといえば、そうではなかった。
人は、大勢の中に居ても、ふと孤独感を覚えることがある。
特に性格や興味関心の点で、異質な人間たちと一緒に居る時に感じるものだ。
ひとりだと孤独だが、いっしょにいると別の形で「疎外感」が生まれてくる。
他者があってこそ、自分の居場所があると考えていた寺崎は、がくぜんとする。
結局は本人でしか解決できない「集団のなかの孤独」をテーマとした作品である。
(制作)NHK(脚本)山田太一
(配役)寺崎悟(杉浦直樹)板倉かやの(鈴木砂羽)土屋礼子(小橋めぐみ)林田泰弘(筒井道隆)
カルロス(マルティン・ラミレス)鄙川信子(岸田今日子)