居酒屋兆治 2020年(令和2年) ドラマ傑作選
藤野伝吉(遠藤憲一)は小さな居酒屋「兆治」を妻・茂子(真矢ミキ)と営んでいる。
伝吉は寡黙だが実直な男で、客からは店の名前の兆治と呼ばれ、店もなかなか繁盛している。
ある日店に、初恋の女・さよ(井川遥)が訪れ「あなたのせいよ」と言い残して姿を消した。
兆治は社会人野球のエースとして活躍した過去があり、さよは当時の恋人だった。
肩を壊しサラリーマンに転身するも、リストラ担当を命じられ退職、居酒屋店主となった。
噂によると彼女は、兆治と別れた後、資産家と結婚し東京で暮らしていたのだが、
家に放火して行方をくらましているという。警察がその後を追っているとも。
過去の話を蒸し返されても…と思いながら気になる兆治。
その後しばらくして、兆治のもとに届いたのはさよの意外な消息だった…。
東京・国立にある小さな居酒屋を舞台に、武骨で一本気な店主・兆治をめぐって、
様々な人々が織り成す人間模様が描かれる。
兆治は、もとサラリーマンだった。あるとき、会社の合理化を進める担当を命じられた。
その仕事は、彼には向いていなかった。兆治は辞表を出して、居酒屋をはじめた。
恋人のさよと別れた理由も、金持ちとさよの縁談が持ち上がり、彼女の幸せを願って
身を引いたのだった。
そんな不器用でストイックな男・兆治を、遠藤憲一が抑えた演技で好演している。
原作は、1979年(昭和54年)文芸雑誌「波」に連載された山口瞳の小説「兆治」である。
単行本として新潮社から刊行されたときに、改題して「居酒屋兆治」となった。
1983年に高倉健主演で映画化。寡黙でストイックな男がもて囃された昭和の時代だった。
男が自分にとっての理想を定め、それを体現すべく生きようとすると、たいていの場合、
ストイックな生き方になってしまう。
その後、平成と令和に繰り返しドラマ化されているのは、やはり時代を超えてそうした
男の美学というものが伝わってくるからなのだろう。
(制作)NHK BSP、東映(原作)山口瞳(脚本)櫻井剛
(配役)藤野伝吉(遠藤憲一)神谷さよ(井川遥)藤野茂子(真矢ミキ)松川(石橋蓮司)
岩下義治(渡辺いっけい)西村まさ彦(西村雅彦)峰子(藤田朋子)有田(上島竜兵)