蒲田行進曲  1982年(昭和57年)       邦画名作選

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舞台は、時代劇が華やかなりし東映京都撮影所。

映画「新撰組」で初主役の座を射止めた銀四郎。
理不尽な扱いを受けても、銀四郎を「銀ちゃん」と呼び慕う大部屋役者のヤス。

ある日、ヤスの下宿に銀四郎が、女優の小夏を連れてやって来た。
銀四郎の子供を身ごもっている小夏。

スキャンダルを恐れる銀四郎は「小夏と一緒になってくれ!」と言いだす…。



つかこうへいの同名戯曲を、深作欣二が監督した痛快アクション人情喜劇の快作。

落ち目の女優を松坂慶子が哀愁漂う熱演で見せる。風間杜夫の怪演も見どころ。

松坂慶子が演じる小夏という女優は、最初は化粧が濃く、はすっ葉な女性として登場する。
ヤスと出会い それぞれの親族に会い、だんだん情が移り、女性としても成長していく。


危険な「階段落ち」の撮影を控え、情緒不安定になったヤスが、家で暴れるシーンがある。

小夏の腹の中の子が自分の子ではない上に、その子を捨てた父親のために自分は命をかけている。
その理不尽さと情けなさのために、ヤスは気分がひっくり返ってしまったのだ。

が、物語のなかで小夏は、暴力から逃げず「あんたのことが好き。ここの生活が好き」と、
暴れるヤスに取りすがって泣くのである。

身の丈に合った今の生活が大切だと、自分にもヤスにも言い聞かせて守ろうとしているのだ。
そういった芯の強さ、健気さは、日本女性の美徳として現代でも生き続けている価値観である。




  製作  松竹

  監督  深作欣二

  配役   小夏 松坂慶子 ヤス 平田満 原田大二郎
      銀四郎 風間杜夫 ヤスの母 清川虹子 監督 蟹江敬三

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                         (蒲田行進曲)