風の又三郎 1940年(昭和15年) 邦画名作選 |
ある風の強い日、谷川の岸の小さな小学校に、一人の少年が転校してくる。
先生は、北海道から転校してきた高田三郎君だと、皆に紹介した。
だが、その三郎少年は、子供たちから、風の神の子ではないかと噂される。
ある暑い日、子供たちは、川へ泳ぎに行く。泳いだ後、皆で相撲を取った。
投げられた三郎は「悔しかったら風を吹かしてみろ」とからかわれる。
しばらく空の雲行きを見ていた三郎は、突然「風の歌」を歌いはじめる。
どうどど、どうどど、どうどど、どう…
すると風が吹いてきたかと思うと、やがて暴風雨となってしまう。
宮沢賢治の同名童話を島耕二監督が映画化したもの。
村の子供たちは、転校してきた三郎をからかって意地悪をする。
だが三郎は、巧みな機転で彼らをやりこめてしまう。
近づく雷雲を見つけ、まるで念力で雨を降らせるかのように歌い出す。
すると、風とともにやって来た突然の夕立に、驚いて立ちすくむ子供たち。
子供たちは皆、三郎をまさしく「風の又三郎」だと思ってしまうのだった。
翌日、学校へ行くと、三郎はまた転校して行って、もう学校にはいない。
子供たちは、三郎はやっぱり風とともに去る「又三郎」だったのだ、と
秋晴れの空を見上げながら思うのだった。
夏の終わりの、変わりやすい東北の自然、そして透き通った川の流れ。
都会から転校してきたかと思うと、まるで一陣の風のように、またすぐに
去っていった不思議な少年三郎。
子供たちの未知のものに対する好奇心と憧れが、素朴な山村の風景の中に
ゆったりと表現された名作である。
製作 日活
監督 島耕二 原作 宮沢賢治
配役 | 三郎 | 片山明彦 | 嘉助 | 星野和正 | |||||||||
先生 | 中田弘二 | 嘉助の姉 | 風見章子 | ||||||||||
三郎の父 | 北龍二 | 佐太郎 | 中島利夫 | ||||||||||
一郎 | 大泉滉 | 佐太郎の妹かよ | 久見京子 |