けものみち 2006年(平成18年) ドラマ傑作選
成沢民子(米倉涼子)は、病で寝たきりの夫を抱え、働きづめの毎日だった。
ある日民子は、自らが勤める料亭「宝仙閣」の女将から、ひとりの男を紹介される。
小滝章二郎(佐藤浩市)と名乗る彼は、ニューロイヤル・ホテルの総支配人だった。
一見紳士的だが、怪しげな雰囲気を漂わせる、どこか得体の知れない男である。
小滝は、民子をそそのかして、政財界の黒幕・鬼頭(平幹二朗)の屋敷に送り込む。
脳梗塞で不自由な生活を送る鬼頭の楽しみは、女や美術品など、美しいものを愛すること。
民子は、鬼頭の莫大な財力を後ろ盾に、宝石デザイナーとして栄光の階段を登っていく。
山を歩くと、人間が作ったのではない奇妙な道に出くわすことがある。
動物が通る「けものみち」だ。人間社会にも「けものみち」があるといわれる。
それは、誰もが一歩道を間違えれば、踏み入れてしまう道である。
普通の人には見えない、この秘密の道は、裏側から権力や金儲けにつながっている。
この道に入り込もうとした男が、野望を秘めたホテルの総支配人・小滝だった。
彼は、料亭の仲居だった民子をそそのかし、政財界の黒幕・鬼頭の元に送り込む。
金のために夫を殺し、政財界のドンに囲われる悪女・民子を、米倉涼子が熱演している。
松本清張の作品の中には、社会悪を告発するといったテーマが多く描かれる。
ドラマに登場する鬼頭のモデルは、一説に戦犯の児玉誉士夫ともいわれている。
彼は戦後に、進駐軍との癒着から、政財界のフィクサーにのし上がった男だ。
劇中で、巨悪の摘発を試みたジャーナリストや刑事が抹殺される場面が登場する。
利権を食いものにする巨悪の前では、マスコミや警察でさえ無力なのである。
(制作)テレビ朝日(EX)(原作)松本清張(脚本)寺田敏雄
(配役)成沢民子(米倉涼子)小滝章二郎(佐藤浩市)秦野重武(吹越満)鬼頭洪太(平幹二朗)
佐伯米子(若村麻由美)黒谷富雄(前川泰之)久恒春樹(仲村トオル)如月初音(東ちづる)
木崎光恵(田丸麻紀)杉原七々美(上原美佐)成沢寛次(田中哲司)武藤美代子(星野真里)