けものみち 1982年(昭和57年) ドラマ傑作選
成沢民子(名取裕子)は、半身不随で寝たきりの夫を抱え、働きづめの毎日だった。
ある日民子は、自らが勤める料亭「芳扇閣」の女将から、ひとりの男を紹介される。
小滝章二郎(山崎努)と名乗る彼は、ニューロイヤル・ホテルの総支配人だった。
小滝は民子に、今の生活から抜け出す手助けをすると申し出る。
民子は小滝の誘いに乗り、失火に見せかけて、寝たきりの夫(石橋蓮司)を焼き殺す。
その後、小滝は多額の報酬を約束し、民子を政界の黒幕・鬼頭(西村晃)の屋敷へ送り込んだ。
脳梗塞で不自由な生活を送る鬼頭の楽しみは、女や美術品など、美しいものを愛することだった。
鬼頭に気に入られた民子は、鬼頭の莫大な財力を後ろ盾に、奔放な生活を送るようになる。
1962年「週刊新潮」に連載された松本清張の同名サスペンス小説のドラマ化。
人間社会から逸脱した人間が通る「けものみち」に足を踏み入れた男女の運命が描かれる。
ホテル支配人の小滝は、料亭の仲居だった民子をそそのかし、政財界の黒幕・鬼頭の元に送り込む。
金のために夫を殺し、政財界のドンに囲われる悪女・民子を、名取裕子が熱演している。
半身不随の夫との暮らしに絶望していた、見るからに地味な彼女が、やがて男たちを踏み台に、
次第にしたたかな女に変身してゆくさまが見どころとなっている。
また、ムソルグスキーの「禿山の一夜」などの背景音楽も、ドラマ効果を盛り上げていた。
(制作)NHK(原作)松本清張(脚本)ジェームス三木
(配役)成沢民子(名取裕子)小滝章二郎(山崎努)秦野重武(永井智雄)鬼頭洪太(西村晃)
山倉米子(加賀まりこ)島村百合子(高森和子)黒谷進(林ゆたか)久恒義夫(伊東四朗)
成沢寛次(石橋蓮司)沢杉院長(中村伸郎)