君は海を見たか   1982年(昭和57年)       ドラマ傑作選

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増子一郎(萩原健一)は、造船会社の主任として忙しい毎日を送っている。


彼は早くに妻を亡くし、一人息子の正一(六浦誠)、妹の弓子(伊藤蘭)と暮らしている。


ある日、息子の正一が体の不調を訴え、翌日の学校の欠席を弓子に申し出る。

仕事に忙殺されていた一郎は、正一の世話は妹に任せたまま、出張に出向いてしまう。


翌日弓子は正一を近くの病院に連れていくが、医師は大学病院での精密検査を勧めた。

精密検査の結果、正一は不治の病である腎臓がんと診断される。


急遽出張から戻り、病院に駆け込んだ一郎に、医師は余命三か月であることを告げる。

一郎は、休職願いを出し、息子に残された時間を一緒に過ごそうと決心するのだった。




仕事一筋の父親と、ひたすらにその父の愛を求める難病の子供との心のすれ違いを通して、
真の人間の生き方を問うシリアスドラマ。


息子が余命三か月と宣告された一郎は、会社からの帰宅電車でいつも見馴れた車窓の風景が
「はじめてみる風景」のように変わっていることに気づく。

車窓に夕暮れの郊外が飛び、夕日に染まった沿道の情景が色鮮やかに映る。

朝晩通っている電車の外の、見馴れたはずの景色が何故だかとても愛おしかった。


ある時、正一の小学校の担任に、正一が描いた真っ黒に塗りつぶした海の絵を見せられ、
息子さんに青い綺麗な海を見せた事はあるか、と聞かれハッとした一郎だった。

自分自身、仕事で毎日海を観ていた筈なのに、忙しさのあまり心の眼で観ていなかった。

一郎は、自分が仕事場とする真っ青な本当の海を、正一に見せてやろうと決心する。


本作は、谷川俊太郎の詩「生きる」がドラマ内で重要な要素として用いられているほか、
主題曲であるショパン「ワルツ10番」も印象に残る作品となっている。
   

 
(制作)フジテレビ(脚本)倉本聡

(配役)増子一郎(萩原健一)増子正一(六浦誠)増子弓子(伊藤蘭)秋元光男(田中邦衛)木宮佳子(関根恵子

門馬修(高岡健二)木口博士(下條正巳)立石俊彦(柴俊夫)大石先生(小林薫)



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                ショパン「ワルツ 第10番」Chopin Waltz in B minor, Op.69 No.2