霧の旗 2010年(平成22年) ドラマ傑作選
大塚欽也(市川海老蔵)は、立て続けに冤罪事件で勝利している若き敏腕弁護士。
あるとき、予約もなしで現れた若い女に、兄の弁護をして欲しいと頼まれる。
彼女は、柳田桐子(相武紗季)といい、兄・正夫が無実の罪で逮捕されたという。
正夫は強盗殺人の犯人にされ、死刑になる可能性もあるらしい。
だが、時間的な余裕がない大塚は、桐子の依頼をすげなく断わる。
翌年、大塚は、無期懲役の判決を受けて控訴中の正夫が獄死したことを知る。
弁護士が弁護を断ったために、無実の兄は獄死したのだと思い込んだ桐子は、
大塚への復讐を決意するのだった。
1959年「婦人公論」に連載された松本清張の同名推理小説のドラマ化。
自分に落ち度が無いのに、人に逆恨みされてしまうというのは、世の不条理の
ひとつではないだろうか。
弁護を断ったために、一人の男が死んだ。だがそれは弁護士の責任ではない。
どんなに正義感に溢れた弁護士だって個人の生活がある。
多忙で疲れ切っているときに、アポ無しで来られたら断るのが普通だろう。
いわんや、そのことで恨まれ、報復まで受けたら、全くやりきれない。
無実の罪を着せられるのも、理不尽な報復を受けるのも、やはり社会の不条理だ。
作者は、そうした世の不条理を捉えて「うかうかしていると、どんな人だって
いつ有罪にされるかわからんぞ」と、作品の中で言いたかったに違いない。
(制作)日本テレビ、AXON、ユニオン映画(原作)松本清張(脚本)中園健司
(配役)大塚欽也(市川海老蔵)奥村雅之(津川雅彦)柳田桐子(相武紗季)柳田正夫(カンニング竹山)
阿部啓一(東貴博)大塚芳子(中澤裕子)河野径子(戸田菜穂)沢木検事(中井貴一)