傷だらけの天使 1974年(昭和49年) ドラマ傑作選
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木暮修(萩原健一)は、ウダツのあがらない私立探偵である。
探偵というより、金のためなら何でも請け負う便利屋に近い。
その日、ビルの屋上にあるペントハウスのねぐらで修は眼をさます。
冷蔵庫は空っぽで食い物を探しても何もない。
すでに稼いだ金は使い果たしてしまったのだ。
弟分の亨(水谷豊)が訪ねて来たが、これまたすっからかんでどうしようもない。
ちょうどそのとき、うまい具合に綾部探偵事務所から仕事の依頼が来る。
所長の綾部(岸田今日子)から依頼された仕事は、宝石店に強盗に入り、
3億円の宝石を奪うもので、報酬は30万だった。
「そんな事をしたら警察に捕まるのでは」と言うと、所長は「大丈夫だ」と言う。
どうもヤバそうな仕事だが、背に腹は替えられないため、引き受けることにした。
途中でオモチャのピストルを購入した修は、客を装い、宝石店を訪れる。
店で一番高い宝石を見せて貰う中で、修はピストルを突きだし、宝石を奪う。
店が警報装置を鳴らしたために、宝石を奪うとすぐさま逃走する。
しかし逃げる最中に、一人の子供にぶつかり、怪我をさせてしまう。
修は、待機していた亨からラグビーのボールを受け取ると、その中に宝石を詰め込み、
再びラグビーボールを亨に渡して逃げて貰う。
だが、思っていた通り、修は警察に取り囲まれて捕まってしまうのだった。
探偵社の下働きで、危険な仕事や、人の嫌がる仕事を押し付けられた若者たちの
心の葛藤や挫折を描いた文字どおり、傷だらけの青春ドラマ。
主人公の木暮修は、ビルのペントハウスで気ままに暮らし、綾部貴子の経営する
探偵事務所で安くこき使われている。
修が唯一心を許すのは、弟分の乾亨だけである。
この底抜けに善人の亨は、修のおかげで、いつも損な目にばかりあっている。
二人とも金と愛に飢え、虚勢を張って社会の底辺で生きているのだった。
東京の町を全力で疾走する躍動感、若者の苛立ちや怒りの中に、やりきれなさが
漂うストーリーが、当時の時代の空気を反映しており、若者たちの共感を集めた。
(制作)日本テレビ(NTV)東宝、渡辺企画(脚本)柴英三郎
(配役)木暮修(萩原健一)乾亨(水谷豊)綾部貴子(岸田今日子)辰巳五郎(岸田森)
浅川京子(ホーン・ユキ)海津警部(西村晃)松下刑事(船戸順)
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