木枯し紋次郎 1972年(昭和47年) ドラマ傑作選
汚れた合羽に三度笠、口にくわえた長楊枝、諸国さすらう旅鴉。人呼んで、木枯し紋次郎。
あるとき紋次郎は、旅先で、ある渡世人から喧嘩の助っ人を頼まれる。
その渡世人は、紋次郎の腕を見込んで、礼金は五両払うとふっかける。
返答を求める渡世人に対して、紋次郎は言い放つ。「あっしにゃぁ関わりのねぇこって」
滅法腕が立つ無宿者・紋次郎は、長い楊枝を斜めにくわえて旅をするニヒルな男。
何か頼まれても「あっしには関りのねえことでござんす」と言うが、結局は関わってしまう主人公に
中村敦夫が扮して大人気となった。
股旅ものは女性にはあまり好まれないのが相場だが、この番組は女性ファンも多かった。
劇中に登場する悪女の多くが、紋次郎に惚れこんでしまうという描写があるが、人との関りを避け、
ひたすら孤独でクールに生きる彼の姿に、共感するものがあったのかも知れない。
番組が始まった1970年代初頭は、高度経済成長も終わり、大学闘争後の虚無感が漂っていた時代。
若者の間には「神田川」など、個人のささやかな生活や恋愛を歌う四畳半フォークが流行していた。
ニヒルでアウトローの紋次郎は、そんなシラケきった時代を象徴するブラウン管のヒーローだった。
(制作)フジテレビ、大映(原作)笹沢左保(脚本)服部佳
(配役)木枯し紋次郎(中村敦夫)お勝(小川真由美)佐太郎(小池朝雄)茂兵衛(植田峻)仙吉(山本一郎)