心のこり 警戒水位より   1989年(平成1年)       ドラマ傑作選

直線上に配置


     



どしゃ降りの雨の夜、小さな港町の定食屋に、ずぶぬれの男が閉店間際に駆け込んできた。


おかみのとみ子(いしだあゆみ)の出した定食をぺろりと平らげる。

男は石山秀一(川谷拓三)といい、丸の内にある建設会社に勤めているという。


秀一は、自殺の名所で知られる「おせんころがし」へ行ってきたと話した。

しかし、とみ子は、なぜ彼がそこへ行ったかを聞かなかったし、

秀一もそれ以上は語らなかった。





それ以来、彼はよく定食を食べに来るようになった。

ある日、秀一は、ニジマスを土産に持ってきて、昼食用にさばいてくれた。

秀一は、八年前に妻と別れて、今はヤモメ暮らしをしているらしい。


秀一に辛い過去があることは、とみ子も同じ心の傷をもつ身として感じていた。

それだからこそ、二人でいるとなぜか、とみ子の心ははずむのだった。


それから数日後、秀一が五千万円の大金を店に持ち込む。

どうやら会社の金らしい。とみ子は彼を温かく迎えるのだが…。



いしだあゆみと川谷拓三という顔合わせで、大人の男女の心の触れ合いを描く。

原作は、直木賞作家・神吉拓郎の短編集「私生活」の中の一篇「警戒水位」。


失恋から男性不信になり、細々と磯料理の店をやっているとみ子と、離婚し、

仕事にもしくじり、窓際族の身に甘んじている秀一が、ふとしたことで知り合う。


ありあわせの魚料理で、ガツガツと食事をする秀一の姿に、とみ子は過去の自分を

見る思いがした。
 

やがて不幸を畳み込んだような風情のとみ子は、秀一が来るのを待ちわびるようになる。

その内面の変化を、いしだあゆみが表情、声の張りなどで、巧みに表現している。


ラストシーンは、余韻をたっぷり含ませ、二人の明日につなげている。



(制作)TBS(原作)神吉拓郎(脚本)宮川一郎

(配役)とみ子(いしだあゆみ)石山秀一(川谷拓三)倉本(庄司永建)


直線上に配置