氷の世界 1999年(平成11年) ドラマ傑作選
大手保険会社の調査部に勤める広川英器(竹野内豊)は、ある事件を担当する。
それは、女子高の女教師が自転車で帰宅途中、堤防から転落死するという事故だった。
同じ頃、警察には「女教師の死は他殺、犯人は学校内部にいる」という匿名の投書が舞い込む。
その投書の情報を得た英器は、女教師の転落死は、単なる事故ではない、と考えるようになる。
さらに調査を進めた英器は、その女教師の同僚・江木塔子(松嶋菜々子)の存在を知る。
調査によると、塔子の元婚約者・久松(及川光博)が、海で変死していたことが判明する。
それは女教師の事故死と同時期に起こっていたのだった。
英器は、事件の真相を知るため、塔子の過去を探ろうとするのだが…。
保険調査員の主人公・英器は、調査の結果、意外な真犯人に辿り着く。
真犯人は女性であり、彼女は過去に、最愛の恋人を塔子に略奪されていた。
ドラマは、最愛の恋人を寝取られてしまった女性が、その奪った相手に、
復讐を遂げていくというものである。
報復の情念によって、その女性は支配されていく。
自分は江木塔子に恋人を奪われた。同じ苦痛を塔子にも与えてやるのだと。
復讐者の女性は、塔子を直接傷つけるのではなく、彼女の恋人を殺めることで、
自らの追った過酷な精神の傷を、塔子自身に共有させようとする。
まさに陰惨さに満ち溢れた展開ではあるものの、ドラマの根底に流れるものは、
復讐に憑かれた女性が、去っていった恋人に捧げるあまりにも純粋な愛情である。
この一途な愛情の裏返しで復讐鬼と化した女性の姿に、どうしようもない哀れさと
悲しみの深さが輪郭づけられることにより、ドラマに奥行きがもたらされている。
(制作)フジテレビ(脚本)野沢尚
(配役)広川英器(竹野内豊)江木塔子(松嶋菜々子)庄野月子(内田有紀)迫田正午(金子賢)迫田七海(片瀬那奈)
池永苑恵(木村多江)久松皓一(及川光博)柴田吉紀(山路和弘)桧山豊彦(谷原章介)烏城武史(仲村トオル)
烏城眞砂子(中嶋朋子)倉本森一(遠藤憲一)井手サトミ(松尾れい子)平瀬和彦(田山涼成)