ラストマン−全盲の捜査官− 2023年(令和5年) ドラマ傑作選
研修生として日本にやって来た皆実広見(福山雅治)は、全盲のFBI捜査官である。
アメリカで彼は、難事件を必ず最後に解決することから「ラストマン」と呼ばれていた。
日本での歓迎式典の席上、皆実は「無差別連続爆破事件の犯人を逮捕する」と宣言する。
そして彼がバディ相手に指名したのは、警察庁の警部補・護道心太朗(大泉洋)だった。
だが生真面目な心太朗は、身勝手な捜査を行う皆実に、終始振り回されてしまうのだった。
全盲のFBI捜査官と、正義感に燃える叩き上げの刑事が、バディを組んで難事件に挑む。
FBI捜査官・皆実(福山雅治)は、盲目という大きなハンデと引き換えに会得した鋭敏な聴覚や
嗅覚を駆使して、犯人の数手先まで見越した推理と的確な判断力で事件を解決していく。
そんな皆実の相棒に任命されたのは、堅物で生真面目な刑事・護道心太朗(大泉洋)だった。
皆実の自分勝手な行動に辟易する心太朗だが、事件を解決していくうちに次第に心を開いていく。
福山雅治演じる皆実は、一見、冷静沈着な人物かと思いきや、実はつかみどころのない飄々とした
性格であり、彼の自由奔放な言動が生真面目な相棒をイラつかせることになる。
こうしたモーレツに人を食ったキャラクターを演じさせたら、福山雅治の独壇場といってよい。
大泉洋演じる心太朗は、散々振り回され、渋い顔でぼやきながら「受けの演技」に徹している。
彼の「受けの演技」が絶妙だからこそ、福山の飄々とした演技が活きているのだと思われる。
第一話では、主人公の皆実が、自身の歓迎会で「無差別爆破事件の犯人を逮捕する」と宣言し、
事件を担当していた捜査一課の刑事たちを敵に回してしまう。
彼らは、FBIのよそ者を警戒し、合理的な助言は無視し、目が見えない奴の指示には従わない
という日本の警察組織がもつ排他的な構造をそのまま体現しているのである。
結局、主人公の皆実の活躍により、事件は解決するのだが、最後まで犯人を特定できなかった
捜査一課の刑事たちの無能さが露呈することになった。
主人公が全盲のFBI捜査官という設定は、そういった日本の警察組織が抱える深刻な問題点を、
海外の視点で見つめ直すという意図が込められているのではないだろうか。
(制作)TBS(脚本)黒岩勉
(配役)皆実広見(福山雅治)護道心太朗(大泉洋)護道京吾(上川隆也)佐久良円花(吉田羊)護道泉(永瀬廉)
吾妻ゆうき(今田美桜)長谷川壮太(奥智哉)馬目吉春(松尾諭)難波望海(王林)護道清二(寺尾聡)