リップスティック 1999年(平成11年) ドラマ傑作選
有明悠(三上博史)は、東京第二少年鑑別所に勤める法務教官。
彼には画家の兄がいたが、七年前に亡くなっている。
有明は、死んだ兄の恋人・桑田千尋(麻生祐未)に思いを寄せていた。
千尋は、有明の気持ちに気づきながらも、その兄を忘れられずにいる。
ある日、傷害事件を起こした少女・早川藍(広末涼子)が収監されてくる。
彼女は、有明に心を開こうとせず、出された食事にも全く口をつけなかった。
藍は、シュウという名前の猫を飼っていた。
あるとき藍は、こっそりシュウの世話をする有明に、特別な気持ちを抱き始める。
鑑別所という閉ざされた空間の中で、一種の会話劇として物語が進行する。
「非行少女」が鑑別所にいるのは約一か月、その後は、保護観察か少年院送致かが決まる。
彼らは「相談室」で、教官たちと濃密な言葉のやり取りをしながら、信頼関係を築いていく。
だが、精神的な孤独や心の傷を抱えている彼女たちの多くは、最後まで報われない。
ある少女は、義父から性的虐待を受けていた。その義父を階段から突き落とし補導される。
だが、鑑別所から家に戻ったものの、自分の居場所がなくなったことを悟り、自殺する。
また、夫のDVによる家庭内崩壊、援助交際、未成年妊娠など、当時すでに問題となっていた
「社会的タブー」を次々と取り上げる展開は放送当時、視聴者に大きな衝撃を与えた。
本作は「永遠の愛」をテーマとした作品である。
劇中、ヒロイン・藍は、これを「永遠という名のバス」に喩えている。
教官・有明と藍の二人は、いずれ、離れ離れにならなければならない運命の中にいた。
むろん、鑑別所という特殊な環境が、二人をそうさせているのは云うまでもない。
だが、やがて朽ち果ててしまう、目に見えるこの世界に「永遠」など、本当に存在するのか。
もし、あるとすれば、モノではなく、誰かを想い続ける「ヒトの心」にあるのではないか。
運命に抗うかのごとく、どんなに遠く離れていても、人を想う‥愛する心は永遠なのだと。
(制作)フジテレビ(原作)西樹守(脚本)野島伸司
(配役)有明悠(三上博史)早川藍(広末涼子)桑田千尋(麻生祐未)三池安奈(中村愛美)松田恵理子(伊藤歩)
井川真白(池脇千鶴)鈴岡小鳩(真柄佳奈子)葛西孝生(いしだ壱成)沢村雪乃(田中美奈子)
田所茂久(宇梶剛士)牧村紘毅(窪塚洋介)小泉章吾(夏八木勲)