舞踊劇 戻橋 1956年(昭和31年) ドラマ傑作選

摂津源氏の頼光(よりみつ)の配下に、渡辺綱(わたなべのつな)と呼ばれる剣の達人がいた。
あるとき、頼光から用事を命じられた綱は、帰路の夜、京都の堀川一条戻橋を通りかかった。
するとそこに、美しい女性がしゃがみ込んでいるのを見つけた。
彼が近づいて事情を尋ねると、小百合という名のその女性はこう言った。
「夜道を一人で帰るのが怖くて、あなたさまに五条の自宅まで送ってほしい」
綱は、深夜に女性が一人で出歩いている様子を不審に思ったが、それでも承諾した。
ただし、その代わりに女性に踊りを披露してほしいと頼んだ。
実はこのとき綱は、月明かりに照らされた堀川の水面に映る鬼の影に気づいていた。
正体を暴かれ、たちまち恐ろしい悪鬼の姿に変わる女。
綱の襟を掴んで飛び去ろうとしたが、綱はすかさず名剣で鬼の右腕を切り落とした。
悪鬼は光を放ちながら退散していったという。
東芝日曜劇場(現在のTBS系日曜劇場)の記念すべき第一回放映作品(1956年12月2日放映)
本作は、舞台で上演される舞踊劇をスタジオ内で再現した作品であり、主演は歌舞伎役者の十七代目、
市村羽左衛門が務め、日本のテレビドラマ史における単発ドラマ枠の草分けとなるスタートを飾った。
当時、民放テレビでは、プロレスやボクシング、プロ野球などのスポーツ中継が人気を集めていた。
後発のKRテレビは、対抗策として、一流俳優を専属にした「日曜劇場」の企画を打ち出した。
だがこの当時は、映画スターのテレビ出演が難しかったため、しばらくは、すでに完成されていた
舞台ものを再演する形で放映することとなった。
時には、ミュージカルやオペラもあったが、それでも茶の間で当代の一流俳優が見られると
いうことで、視聴者の話題と人気を集めることになった。
(制作)KR(原作)河竹黙阿弥(演出)石川甫
(配役)渡辺綱(市村羽左衛門)源頼光(常磐津千東勢太夫)愛宕の悪鬼(中村福助)
