もういちど春 1981年(昭和56年) ドラマ傑作選
彩子(伊東ゆかり)33歳は、小学生の一人息子がいる専業主婦。
会社員の夫・雄三(秋野太作)と、東京の郊外に三人で暮らしている。
夫は、エリートサラリーマンだが、怒りっぽく不実な一面があった。
ある日、彩子は、夫が外で子供をつくったことを知り、離婚を申し出る。
しかし、夫・雄三は、彩子を暴力でねじ伏せてしまう。
我慢できなくなった彩子は、息子・俊一を連れて家を出る計画を立てる。
家を出たものの、行くあてが無い彩子は、かつての上司や友人を頼りながら、
今後の身の振り方を模索していくのだった。
本作は、夫に絶望して別れた子連れの主婦が、どうして生きていくか、その困難さを
描くもので、当時33歳の伊東ゆかりが、自立して生きる等身大の女性を演じている。
人気歌手の伊東だが、ドラマでは、歌番組で見せる華やかさはうかがえず、心細げで
憂いのある女の表情をのぞかせる。ヒロイン・彩子の役柄になりきっているのだろう。
一方、夫・雄三を演じた秋野太作は、俳優座出身のベテランであり、その軽妙洒脱な
演技で独特の存在感を発揮する個性派俳優として人気を博していた。
本作では、感情を抑えられず妻に手を上げる夫を好演し、新たな境地を披露している。
1981年は、東京地裁のロッキード裁判丸紅ルート公判で、榎本被告の前夫人の三恵子さんが
「榎本が5億円受領を認める発言をした」と爆弾発言し「蜂のひと刺し」が流行語になった。
これ以降、女性の力が増し、テレビドラマも「金曜日の妻たち」「くれない族の反乱」など
女性の自立をテーマにした作品が増えるようになった。
(制作)TBS(脚本)横光晃
(主題歌)伊東ゆかり「強がり」(作詞:なかにし礼、作曲:林哲司)
(配役)中井彩子(伊東ゆかり)中井雄三(秋野太作)谷川亮(小野寺昭)田上マリ子(音無美紀子)
井川リサ子(佳那晃子)柿沼学(柳生博)麻生真紀(山本みどり)南条宏(岡本富士太)