七瀬ふたたび 1979年(昭和54年) ドラマ傑作選

人の心を読むことができる超能力者、火田七瀬(多岐川裕美)は、人に超能力者だと悟られるのを恐れて、
お手伝いさん稼業をやめ、あてのない旅に出る。
夜汽車に乗った七瀬は、彼女と同じテレパシストの少年ノリオ、そして予知能力を持った恒夫に出会う。
その後、次々と異なる超能力の持ち主とめぐり会った七瀬は、彼らと共に、超能力者を抹殺しようと
たくらむ暗黒組織と壮絶なバトルを繰り広げる…。
テレパシー能力を持つヒロイン七瀬、予知能力を持つ恒夫、時間旅行者である藤子といった、 SF 的世界の
住人である超能力者たちが、ふつうの人間と共存しているのだが、そうした超能力者たちは、ふつうの人間
によって自分たちの本質があらわにされるのを可能な限り避けようとしている。
それは彼らのような異質な存在を排除しようとする社会の集団心理が働いているからである。
たとえば、テレパシーのような能力は、心の内容を直接知られる危険性があるため、プライバシーや
精神的な安全を脅かすものとして人々から敬遠され、嫌悪の対象とされてしまう。
また予知能力は、政府や警察などの既存の統制を超えた行動が可能であるため、社会秩序を安定させたい
支配層や一般市民から脅威とみなされ、排除や迫害の対象とされてしまう。
七瀬をはじめとするエスパーたちは、楽天的なヒーローではない。能力を持ったこと自体に苦悩する。
緊迫した物語から浮かび上がってくるのは、異能の者ゆえの疎外感と孤独だ。
孤独を強いられたエスパーたちは、自らの居場所を守るため、力を合わせて団結しようとするのだが、
彼らを抹殺しようとする暗黒組織の手が迫って来る。
そして、血みどろの闘いも虚しく、仲間のエスパーたちは、次々と倒されていくのだった。
本作は、1972年に始まった「少年ドラマシリーズ」の一作だが、同ドラマ枠でダントツの人気を誇る。
それはサスペンスドラマとしての内容の面白さもさることながら、ヒロイン七瀬を演じた多岐川裕美の
魅力によるところも大きいと思われる。
彼女の持つ透明感のある上品な美しさだけでなく、その演技からは、他人の心が読める超能力者としての
戸惑いと哀しみまでもが伝わってきた。
また、ベテラン芥川隆行の絶妙なナレーションや、シンガーソングライターの深野義和が歌った主題歌
「風信子(ひやしんす)どこへ」も耳に残る。
(制作)NHK(原作)筒井康隆(脚本)石堂淑朗
(主題歌)深野義和「風信子(ひやしんす)どこへ」(作詩作曲:深野義和)
(配役)火田七瀬(多岐川裕美)小林ノリオ(新垣嘉啓)岩淵恒夫(堀内正美)漁(すなどり)藤子(村地弘美)
ヘンリー(アレキサンダー・イーズリー)西尾正人(藤木敬士)記者・山村栄一(高橋長英)語り(芥川隆行)
